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日外会誌. 83(7): 635-648, 1982


原著

Randomized Controlled StudyによるN-CWSの胃癌術後免疫療法の臨床的評価

1) 千葉大学 医学部第2外科(主任:佐藤博教授)
2) 東京大学 医学部保健学科保健管理学教室(教授)

佐藤 博1) , 落合 武徳1) , 佐藤 裕俊1) , 林 良輔1) , 渡辺 一男1) , 浅野 武秀1) , 磯野 可一1) , 田中 恒男2)

(昭和57年3月31日受付)

I.内容要旨
Nocardia rubraから得られた細胞壁骨格成分Cell Wall Skeleton(N-CWS)は強い免疫増強活性を有し,マウスの同系移植腫瘍において宿主介在性の抗腫瘍活性が認められる.本論文は胃癌切除例を対象としてN-CWSを用いた免疫療法の有効性を推計学的に判定する目的で行つたrandomized controlled studyを記載したものである.1979年9月から1981年3月までの1年7ヵ月間に千葉大学第二外科および14の関連病院外科で行われた胃癌切除例全例を対象とし,controllerが割りつけた封筒法によつて無作為に化学療法群か化学療法+N-CWS投与による免疫療法群かを決定し,胃切除後に該当する治療を行つた.302例の胃切除患者が対象として登録されたが,そのうち早期癌,非胃癌,年齢76歳以上,非切除,同時性重複癌などの理由で44例が除外例となり,解析対象は化学療法群118例,免疫療法群140例の計258例であつた.1981年6月30日に生存調査を実施した.手術日からの平均観察期間は410日であつた.化学療法群と免疫療法群の生命表法による生存率曲線の差の比較を組織学的所見により判定した治癒切除症例と非治癒切除症例において行つた.生存率に影響を与える背景因子即ち患者の性別,年齢分布,胃切除範囲,合併切除の有無,リンパ節の郭清程度,肝転移,腹膜播種,組織学的検索によるリンパ節転移の程度,深達度,切除断端の癌遺残,浸潤増殖様式,組織型,術後化学療法の施行などの点に関して化学療法群と免疫療法群の間に有意の差はなかつた.このように種々の背景因子が等質な両群間で生存率曲線を比較すると,治癒切除症例では両群ともいまだ生存率は80%をこえており,両群間に差はみとめられていないが,非治癒切除例では化学療法群に比して免疫療法群に有意の延命効果が認められた(p<0.05).本研究は胃癌の非治癒切除例においてN-CWSによる術後の免疫療法が有効であることを示している.

キーワード
胃癌術後免疫療法, Nocardia rubra CWS, randomized controlled study


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