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日外会誌. 83(6): 534-547, 1982


原著

消化管吻合創部治癒過程の血行動態的研究
-酸素の需要と供給,酸素消費量の面からの検討-

東京医科歯科大学 第2外科

名越 正樹

(昭和57年2月22日受付)

I.内容要旨
48頭の雑種成犬を使用してAlbert-Lembert法(以下A-L法)および器械吻合法によつて結腸端々吻合を作成し,その治癒過程における血行動態変動について,主に酸素の需給バランス,酸素消費量の面から検討を加えた.
① 吻合術後,経時的に尾側腸間膜静脈血酸素分圧および炭酸ガス分圧,頭側腸間膜静脈血酸素分圧および炭酸ガス分圧を測定し,相対的静脈血酸素分圧および炭酸ガス分圧を算出してその変動を検討した.
② 尾側腸間膜静脈血酸素分圧および相対的静脈血酸素分圧の結果より,吻合術後は吻合部局所の酸素の需給バランスはくずれ,12日目まで酸素需要の増加によつて相対的酸素供給量が減少していき,12日目以降は酸素供給量が漸増し,21日目では術前の状態に回復することがわかつた.
③ 尾側腸間膜静脈血炭酸ガス分圧および,相対的静脈血炭酸ガス分圧の経時的変化は,酸素消費量のそれと消長が同ーであつた.
④ 術前の成犬の尾側腸間膜動脈血流量は14.4ml/min,結腸の酸素消費量は1.6ml/min/100gであつた.尾側腸間膜動脈血流量,尾側腸間膜動脈および静脈血酸素含量を測定し,Fickの原理に甚づいて吻合創部酸素消費量を算出し,その経時的変化を検討した.酸素消費量は12日目まで増加を続けて術前値の約2倍に達した.12日目以降は漸減したが21日目までの観察では術前値に復していなかつた.
⑤ A-L法と器械吻合法による吻合創部血行動態の比較では本質的な差異はみとめ得なかつた.しかし,器械吻合法で術後早期から酸素消費量の増加がみられ,また,その減少も早い時期に始まる傾向にあつた.
⑥ 器械吻合法はA-L法と同様,良好な治癒過程を営んだ.

キーワード
腸管吻合部血行動態, 腸管吻合部酸素消費量, 腸管吻合部治癒機序


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