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日外会誌. 83(6): 524-533, 1982


原著

単心室の外科治療に関する研究
-心室容積からの根治術の検討-

1) 大阪大学 医学部第1外科
2) 大阪大学 放射線科
3) 大阪大学 小児科
4) 奈良医科大学 第3外科
5) 鳥取大学 医学部第2外科

島﨑 靖久1) , 広瀬 一1) , 中埜 粛1) , 松田 暉1) , 川島 康生1) , 森本 静夫2) , 有沢 淳2) , 小川 實3) , 北村 惣一郎4) , 森 透5)

(昭和57年2月10日受付)

I.内容要旨
単心室症20例および本症根治術後2例の計22例の心室容積,心機能を検討した.心室形態からの内訳は小塚,川島分類のI型6例,III型14例で,これらは根治術前症例であり,根治術後の2例はII型であつた.
根治術前の20例の拡張末期容積指数は72-282(136±51)ml/m2であり,正常左室・右室拡張末期容積の和の64-206(115±42)%に相当した.心室拡張末期容積指数と肺体血流量比との間にr=0.84,p<0.001の高い直線相関を認め,心室が拍出する肺血流量が多い程,心室容積が大きいことを示した.駆出分画は0.40-0.64(0.55±0.06)であり,心室腔容積との間には相関を認めなかつた.房室弁逆流を共通房室弁残遺合併14例中6例に認め,この6例の駆出分画は平均0.49±0.08とこれを合併しない例(0.57±0.04)よりも有意に低値であつた(p<0.01).
根治術後の2例の心室拡張末期容積は心室全体としては正常左室・右室容積の和の136,66%であり,心室全体の駆出分画は,0.55,0.38であつた.人工心室中隔は収縮期に低圧側の右室側へ膨隆した.右室/左室容積比は拡張末期で第1,第2例それぞれ0.74,0.67であつた.左室・右室の駆出分画は第1例でそれぞれ0.50,0.61,第2例でそれぞれ0.31,0.49であつた.
以上の結果から,単心室の根治術(心室2分割)に際しては正常よりも大きな心室容積が必要であり,小さな心室は体動脈一肺動脈短絡術により心室容積を大きくすることができると考えられた.心室2分割に際しては,右室圧が低下する場合,右室側心室が小さくなる様に分割すべきで,左室機能温存を考慮して人工心室中隔はできる限り,小さくすべきと考えられた.

キーワード
単心室, 心室容積, 心室2分割, 心室機能

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