[書誌情報] [全文PDF] (1919KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 83(5): 468-472, 1982


原著

肝細胞移植に関する研究

金沢大学 第1外科(主任:岩喬教授)

川浦 幸光 , 酒徳 光明 , 疋島 寛 , 岩 喬

(昭和56年12月24日受付)

I.内容要旨
移植肝細胞の生着に適した臓器,グルカゴン,インスリンによる移植肝細胞の影響.肝切除範囲を変化させた場合,脾内移植肝細胞はどのような増殖を営むかを検討した.ウイスター系ラット68匹を用いた.それに加え,10匹のウイスター系ラットから肝細胞を得た.肝細胞処理はBerry & Friend の変法により行つた.実験I:肝細胞1×107個を脾内(A群),膵内(B群),腹膜内(C群),胃壁内(D群)に注入し,1週間後,3週間,6カ月後に臓器の組織学的検索を行つた.実験II:上記肝細胞ろ液にレギュラーインスリンを添加し,脾内(E群),膵内(F群),腹膜内(G群),胃壁内(H群)に1×107個注入した.更にグルカゴンを添加し,同様に注入した群(I~L群)とした.2カ月後に組織学的検索を行つた.実験III:肝ー葉切除後,上記肝細胞ろ液(1×107個)を脾内に注入した群(M群),二葉切除後,三葉切除後,四葉切除後(N~P群)に脾内に注入した群とした.2カ月後に組織学的検索を行つた.
以上の実験から次の結果を得た.
① 移植肝細胞は脾臓内でのみ生着し,3週間後には細胞集団を形成するに至つた.
② 移植肝細胞は脾内で増殖する一方では,貪食を受けている像も散見された.
③ インスリン,グルカゴンは単独で使用されても,移植肝細胞の増殖には影響を与えなかつた.
④ 肝切除範囲が大きい群ほど脾臓内に移植された肝細胞の増殖は活発であつた.
肝細胞移植が臨床に応用されるまでには多くの問題を解決しなければならないが,以上の実験結果から肝細胞が脾臓内でのみ生育すること,ならびに,肝切除範囲を大きくするに従つて,脾臓内の移植肝細胞の増殖が活発になる点は興味深い.

キーワード
移植肝細胞, 脾臓内移植, 肝切除範囲, インスリン, グルカゴン

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。