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日外会誌. 83(4): 378-383, 1982


原著

胃・十二指腸潰瘍におけるペプシン・酸分泌比について
-Zollinger-Ellison症候群の鑑別診断も含めて-

東北大学 第1外科学教室(主任:佐藤寿雄教授)

亀山 仁一 , 佐々木 巌 , 今村 幹雄 , 乾 秀

(昭和56年12月14日受付)

I.内容要旨
胃潰瘍43例,併存潰瘍18例,十二指腸潰瘍51例,Zollinger-Ellison症候群1例および健常人12例を対象として,ヒスタミン,インスリン剌激における病態についてペプシン・酸分泌比という面から検討した.なお,今回著者らはペプシン・酸分泌比は胃酸分泌のpeak acid output(PAO),ペプシン分泌のpeak pepsin output(PPO)から算出したPPO/PAO×10という指標を用いて表わしたところ,以下の成績を得た.
1)胃潰瘍,併存潰瘍,十二指腸潰瘍および健常人におけるPPO/PAO×10はヒスタミン刺激ではそれぞれ2.4±0.2,1.8±0.4,1.4±0.1,1.6±0.2,インスリン剌激ではそれぞれ4.1±0.4,3.1±0.5,2.2±0.2,2.8±0.8と各疾患により異なり,胃潰瘍で最も高値を示し,次いで併存潰瘍,健常人で,十二指腸潰瘍では最も低値を示した.すなわち,胃潰瘍ではペプシン分泌が優位であり,十二指腸潰瘍では胃酸分泌が優位であるものと思われた.
2)一方,Zollinger-Ellison症候群ではヒスタミン,インスリン剌激ともに迷切前後にかかわらず,PPO/PAO×10はいずれも1.0以下と他疾患に比べ著明に低値を示し,十二指腸潰瘍よりもさらに胃酸分泌優位の傾向が認められた.
3)以上のことから,迷切前後にかかわらずヒスタミン,インスリン刺激におけるPPO/PAO×10が1.0以下であればZollinger-Ellison症候群を疑つてもよいものと思われた.

キーワード
ペプシン・酸分泌比, 胃潰瘍, 併存潰瘍, 十二指腸潰瘍, Zollinger-Ellison症候群

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