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日外会誌. 83(4): 357-367, 1982


原著

上皮小体の凍結保存

筑波大学 臨床医学系外科(指導:藤本吉秀教授*)
*) 現東京女子医科大学 内分泌外科教授
**) 現平塚胃腸病院 外科

江崎 昌俊**)

(昭和57年1月6日受付)

I.内容要旨
上皮小体機能亢進症の手術においては,術後に高カルシウム血症の再発がなく,かつ術後永久性上皮小体機能低下症を起さないことが重要であり,このことはとくに上皮小体過形成例や再手術例で問題になる.これに対する最も確実で安全な方法が,上皮小体の凍結保存とその自己移植の活用であり,かかる観点から次の基礎的研究を行なつた.
凍結保存の方法として,フィシャーラットおよびヒトから摘出した上皮小体を,培養液,血清・凍害防止剤DMSOの混合液に入れ,-4℃に1時間,-20℃に2時間冷却後,液体窒素中に保存した.解凍は37℃温浴中で急速解凍した.
凍結上皮小体のviabilityの検索は,機能と形態の両面から行なつた.
a)機能的観察:ラット上皮小体を1~3週間凍結保存後解凍し,予め上皮小体を摘除して低カルシウム血症としたラットの筋膜下に移植し,著明な臨床症状の回復と血清カルシンムの回復を認めた.その後,移植した上皮小体を再びとり出したところ,上皮小体機能低下症が発現し,解凍して移植した上皮小体が十分な機能を出していたことが確認された.
b)形態学的観察:ラットおよびヒト上皮小体の解凍直後の観察では,核はよくその構造を保つていたが,細胞質の傷害が部分的に認められた.解凍したものを移植し,2週間以上経て行なつた形態学的検査では,細胞質は十分に修復されており,凍結による傷害は可逆的であることが確認された.
以上,実用的な簡便凍結法を開発し,上皮小体凍結保存が可能であることを証明し,臨床応用の基礎を確立した.

キーワード
上皮小体, 凍結保存, 解凍, 自己移植, 原発性ならびに続発性上皮小体機能亢進症

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