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日外会誌. 83(4): 331-337, 1982


原著

実験腫瘍に対する内分泌および化学療法の併用による効果の増強に関する研究

東北大学 第2外科教室(主任:葛西森夫教授)

木村 道夫

(昭和56年11月24日受付)

I.内容要旨
進行・再発乳癌患者に対して,卵巣副腎摘出と抗癌剤の併用による複合療法を行うと高い有効率が得られる事から,両者の間に何等かの相乗作用があるのではないかと考え,実験腫瘍を用いて検討してみた.
可移植性乳腺腫瘍であるMRMT-1を移植したSDラットおよびMM102を移植したC3Hマウスに両側卵摘を行い,48時間後に腹腔内に5-Fuを投与して経時的に組識内の5-Fu濃度を測定したところ,卵摘群では対照群に較べて高い腫瘍内および肝内5-Fu濃度を示した.次に腹水肝癌であるAH109Aを皮下に移植したDonryuラットについても同様の実験を行つたところ,腫瘍内5-Fu濃度は卵摘群で高い傾向を示した.一方,SDラットに卵摘を行い48時間後に5-Fuを腹腔内投与した時の血中5-Fu濃度の変化を見ると,やはり卵摘群で高い濃度を示した.
次に,SDラットに卵摘を行い48時間後に肝を採取して0.5%肝ホモジェネートを作製し,in vitroでの5-Fuの不活性化について検討したところ,卵摘群の肝では対照群に比較して有意に5-Fuの不活性化が抑制されている事がわかつた.
卵摘48時間後の血中各種ホルモンの濃度を調べてみると,卵摘群では対照群に較べてEstrone,EstradiolおよびProgesteroneが低い値を示していた.
以上の結果から,卵巣摘出による組織内5-Fu濃度の上昇は,卵摘による内分泌環境の変化が主として肝の5-Fu代謝酵素の活性に影響を与え,その結果5-Fuの不活性化が抑えられたために生じたものと推定された.

キーワード
実験腫瘍, 卵巣摘出, 5-Fu, 組織内濃度

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