[書誌情報] [全文PDF] (3503KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 83(3): 285-296, 1982


原著

周囲胃粘膜よりみた多発早期胃癌の臨床病理学的研究

順天堂大学 第1外科(主任:城所 仂教授)

熊谷 一秀

(昭和56年11月16日受付)

I.内容要旨
現在まで,多発胃癌を分類整理し,この中から一定の法則的なものを導き出そうという意図をもつた研究はごく少ない.
今回著者は,癌巣周囲の背景胃粘膜が比較的よく保たれていると考えられる教室の多発早期胃癌44例を対象として,主として背景胃粘膜別に分類,検討を行った.
各癌巣の占居部位を萎縮帯領域,中間帯領域,胃底腺領域と3領域に分け,多発癌巣全てが萎縮帯領域に含まれるものを萎縮帯型,同様に全てが中間帯領域に入るものを中間帯型,萎縮帯領域と中間帯領域に分かれるものを萎縮帯中間帯型,胃底腺領域を含むものをその他とし,これらの分類を基礎として各多発癌巣を検討し以下の結論を得た.
① 教室の多発早期胃癌は全例F-lineの幽門側に存在した.
② 各型別の頻度は,萎縮帯型20例,中間帯型15例,萎縮帯中間帯型9例と同じ背景胃粘膜に属するものが80%と大部分を占めた.
③ 中間帯領域に関与する症例が24例と過半数を占めた.
④ 萎縮帯型,中間帯型と同一の背景粘膜に属するものでは,肉眼型,組織型,癌巣周囲の腸上皮化生の程度が類似しているものが大部分であったが,萎縮帯中間帯型と異なる背景胃粘膜に存在する症例では,それらが異なるものが多かった.
⑤ 以上のことより,多発胃癌の各々癌巣の大部分は比較的同一の背景胃粘膜より発癌したものと示唆された.

キーワード
胃癌, 多発胃癌, 早期胃癌, 背景胃粘膜


<< 前の論文へ次の論文へ >>

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。