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日外会誌. 83(3): 264-276, 1982


原著

胸部食道癌における術中経リンパ節的制癌剤投与法の実験的臨床的研究

九州大学 医学部第2外科(指導:井口 潔教授)

夏田 康則

(昭和56年9月12日受付)

I.内容要旨
食道癌手術において郭清困難な非開胸側の転移リンパ節に対する術中制癌剤局所投与法として,気管系リンパ節の流注の中心である気管分岐部リンパ節にemulsion化したBleomycin(以下emulsion-BLMと略)を注入する方法を考案し,実験的に本法の妥当性と安全性を検討して臨床に応用した.
犬の気管分岐部リンパ節に注入されたemulsion-ELMは速やかに両胸腔内の気管系リンパ節に移行し,20分で最高濃度に達し3時間まで測定可能であった.この際,前もつて開胸側の頚部ならびに胸腔内のリンパ節を郭清しておけば非開胸側のリンパ節内BLM濃度は約2倍となり,その滞留時間も延長した.また,肺および血清のBLM濃度はリンパ節にくらべ有意に低値であった.家兎Vx 2癌を用いた転移リンパ節での注入実験で,転移の多寡とBLM移行量とはほぼ逆相関の関係にあったが,高度な転移リンパ節でもBLMの移行が完全に阻害されることはなかった.
胸部食道癌17例に対し30mgのemulsion-BLMを開胸直後に気管分岐部リンパに注入し摘出リンパ内BLM濃度を測定した結果,転移の有無にかかわらず75個中31個41.3%に最高76mcg/gが検出され,とくに胸部気管,胸部上部傍食道,肺門の各リンパ節で高濃度であった.また,血清BLM濃度は最高0.4mcg/mlであり3時間で測定不能となった.

キーワード
食道癌, 制癌剤局所投与法, 気管分岐部リンパ節, Bleomycin, emulsion


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