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日外会誌. 83(2): 192-195, 1982


原著

肺癌と他臓器重複癌の治療

兵庫県立病院 がんセンター外科

古賀 昭夫 , 石井 曻

(昭和56年9月12日受付)

I.内容要旨
1962年10月から1980年9月までに入院した原発性肺癌532例のうち,他臓器癌と重複した11例(2.1%)を対象として,これらの症例について検討し,肺癌と他臓器重複癌の治療について考察した.組合せは,肺・胃4例,肺・子宮3例と肺・結腸,肺・直腸,肺・乳房,肺・肺の各1例であった.
両癌とも治療に成功したものは8例で,このうちの7例は両病巣とも切除したが,手術直接死亡はなく,遠隔死の2例を除いて5例が生存中である.成功例中の1例は,胃全摘後の気管支腺様嚢胞癌でLinac照射と化学療法で腫瘍が消失し,7年6カ月生存している.治療不成功例は3例で,2例は他臓器癌切除後の肺癌で,いずれも遠隔転移のために切除不能であり,1例は同時性の両側に生じた肺癌であるが,高齢と心肺機能不全で非切除に終つた.
一般に,重複癌の第2癌は手術不能になったり,治療に制約を受け易い.同時性か,第2癌が肺の場合は,術前に原発か否かの確診が困難である.他臓器が根治的に治療されているか,その可能性のある場合の孤立性肺病巣は積極的な切除の適応となる.同時性で,両癌の悪性度の比較が困難なときは,肺切除を優先した方が有利である.CEA値測定は治療効果の指標として有用である.精検時のroutineの検査と,すべての癌患者のfollow-upに一層の注意が必要である.

キーワード
肺癌, 重複癌


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