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日外会誌. 83(1): 60-65, 1982


原著

胸部外科手術麻酔におけるHFV(High Frequency Ventilation)の応用

1) 島田市民病院 胸部外科
2) 京大 医学部麻酔科

和田 洋己1) , 神頭 徹1) , 乾 健二1) , 大島 英治2) , 荒井 俊之2)

(昭和56年9月11日受付)

I.内容要旨
胸部外科手術において対象の高齢化とともに,肺機能低下症例や術後ARDSが多くなってきた.これら症例において従来のIPPVやCPAPなどの呼吸管理は覚しい成績を示したが,一方それにてもなお救命しえない症例のあることも事実である.
近年になりARDSの呼吸管理にHFVと呼ばれる一連の補助呼吸法が報告され,その特徴や有効性が述べられている.その特徴は,1回換気量が解剖学的死腔量かそれ以下と極めて少なく,気管内圧のピーク圧,平均圧が低いため胸腔内圧も低く変化が少ない.しかし機能的残気量(FRC)はIPPVやCPAPより高く保ちうる.又胸腔内圧が低いことにより循環系に及ぼす影響も少ない.これらの特徴に注目して我々は近年増加しつつあるpoor risk患者の開胸手術症例にHFVが有効かどうかを検討するために主として高齢者を中心に12症例にHFV呼吸管理を行った.その結果術野からのエアーリークが多い症例においても動脈血ガス分析所見からは異常は認められなかった.HFV中最低値を示したPaO2の動脈血採取時のデータをみると平均値でPaO2 107torr(58-188),PaCO2 44torr(29-77),pH7.37(7.23-7.50),BE-2.41mEq/l(-4.0-4.0)を示していた.以上の各値はHFVを行うに従い分散度の減少がみられた.最後に術者の立場からみると気道内圧の変化が少ないため肺の容積変動が少なくなり過膨張がないこと,圧排した部分は無気肺になるが同じ肺葉でも他の部分は含気していることなどから極めて手術操作は行ないやすかった.

キーワード
HFV, 開胸手術, 高齢者手術, 肺機能

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