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日外会誌. 82(11): 1377-1389, 1981


原著

下肢動脈広汎閉塞症に対する遊離大網移植術に関する実験的,臨床的研究

九州大学 医学部第2外科教室(主任:井口 潔教授)

牧野 純造

(昭和56年7月8日受付)

I.内容要旨
下肢動脈広汎閉塞性疾患に対する遊離大網移植術の効果発現機序ならびに良好な効果を得るために必要な条件を明らかにするために実験的ならびに臨床的研究をおこなつた。
実験的研究では雑種成犬の後肢に広汎阻血肢を作製し、有柄大網を阻血肢の大腿筋肉間に移植する群(A群,臨床例で移植大網の血管が長期開存した場合を想定)と,切除した大網を血管吻合をおこなうことなく阻血肢大腿筋肉間に埋没する群(B群,臨床例で移植大網血管が短期間に閉塞した場合を想定) とについて比較検討した。A群では、移植後1週目頃から移植大網と阻血肢との間に血管交通が形成されはじめ、6週後には豊富な血管交通が形成された。色素希釈法による阻血肢の血流は,移植後6週目で有意の増加がみられた。これに対してB群では,大網は瘢痕化し,移植後6週間を経た後でも血管交通は極めて貧弱で,阻血肢の血流増加も認められなかつた.すなわち,下肢動脈広汎閉塞性症患に対する遊離大網移植術では,移植大網の血管と周囲組織との間に血管交通が形成され、阻血肢の血流増加が得られるが、より良好な血流増加を期待するためには移植大網の血管が長期開存していることが極めて大切な条件であると考えられた。
臨床例においては、移植大網動脈の長期開存をはかるため,吻合した胃大網動脈と深部静脈との間にA-V shuntを作製する方法を考案した.下肢動脈広汎閉塞例9例(TAO 8例, ASO 1例に対して遊離大網移植術を施行し,そのうち, A-V shuntを併施した4例では, 3例に阻血性症状の著しい改善が得られた.

キーワード
下肢動脈広汎閉塞症, 遊離大網移植術(A-V shunt併施), 新生血管交通

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