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日外会誌. 82(11): 1366-1376, 1981


原著

全結腸切除,直腸粘膜切除,回腸肛門吻合術後の直腸肛門機能

東京医科歯科大学 第2外科学教室(主任:浅野献一教授)

松尾 聰

(昭和56年6月26日受付)

I.内容要旨
大腸粘膜の完全なる摘除を行い,かつ自然肛門機能の温存を目的とした全結腸切除,直腸粘膜切除,回腸肛門吻合術(回肛吻合術)は大腸腺腫症,潰瘍性大腸炎に対する理想的術式であるが, よりよい排便機能の温存が研究課題である.
そこで回肛吻合術を施行した大腸腺腫症17例,潰瘍性大腸炎5例について,直腸肛門内圧測定を行い,臨床的排便機能との関連性,更に回腸肛門吻合部の貯溜嚢の形態と排便機能との関連についても検討し, これからの術式改善の指標とした.
その結果,直腸肛門内圧測定の成績は術後の排便機能をよく反映していることが判明した.すなわち一時的回腸人工肛門を閉鎖し, 自然肛門からの排便を得た15例についてみると,肛門管最大静止圧が60cmH2O以上の11例は,臨床的排便機能がすべてgood並びにexcellentと判定された.これに反し50cmH2O以下の4例はすべてfair並びにfailureと判定された. 又直腸肛門反射では,陽性例7例中6例はgood以上の成績であつた.その他直腸内圧,肛門管随意収縮圧,肛門管収縮波の分析を行ったが臨床評価との間には相関は認めなかつた.貯溜嚢の型別では肛門管直上に便貯溜嚢を作成したtypeBが1日排便回数,形態の面からも良好であつた.
これらを検討した結果,回肛吻合術における術後排便機能を最もよく反映するのは肛門管最大静止圧であり,又直腸肛門反射の陽性である例では,やはり排便機能の良いものが多いことから,手術時における直腸筋筒特に肛門管近くの内括約筋を含めた筋層の損傷をできる限り少くする必要を認めた.
又排便回数を決めるものは肛門括約機能のみならず,便貯溜嚢の部位,形態も重要な役割を示すことが明らかとなつた.

キーワード
全結腸切除, 直腸粘膜切除術, 回腸肛門吻合術, 直腸肛門内圧, 直腸肛門反射

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