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日外会誌. 82(11): 1314-1320, 1981


原著

Cardioplegia後血液再灌流の至適灌流圧

順天堂大学 胸部外科

亀田 隆明 , 天野 純 , 岡村 高雄 , 砂盛 誠 , 鈴木 章夫

(昭和56年6月11日受付)

I.内容要旨
Cardioplegia後の血液再灌流は, 虚血性障害のある心筋において,形態及び機能に著しいreperfusion injuryを惹起することが判明している.虚血後の血液再灌流の灌流圧及び灌流量の至適条件に関しては定説がなく,本研究の目的は, 血行力学,代謝及び形態学的な面からそれらを決定することで,今回は灌流圧の面について報告する.雑種成犬20頭を使用し,左第 4肋間にて開胸. ECG,Ap,LV max dp/dt,を測定計算した.C.O.は熱希釈法によつて求め, 冠血流量(CBF)は中枢側LAD及びLCXにそれぞれ電磁流量計を装着測定した.本実験を通じ全身低体温体外循環を灌流量80ml/kg/mmにて維持し,心筋温28℃で1時間の大動脈遮断を行つた.遮断解除後灌流量一定のまま灌流圧A群では50mmHg,B群では80mmHg,C群では150mmHgとし15分間CPBの補助を行つた.降圧剤としてはクロルプロマジンを昇圧剤としてはメトキサミンを使用した.心筋由来酵素MB-CPKとm-GOTは.冠状静脈測血からCPB前, cardioplegia直後およびreperfusion60分に測定した.実験終了後, 心内膜側心筋,心外膜側心筋,心室中隔の水分含量及びATP,creatine phosphsteを生検組織から測定し,更に心内膜側心筋の超微形態学的検索を行った.心機能は各群ともcardioplegia前後において低下したが,特にC群では7例中4例がLOSのため死亡した.またC.I.及びS.I.はA群がreperfusion後, B群に比し有意に高値を示した.m-GOTはA群が他の群に比しreperfusion後,低値を示した.心筋水分含量は,低濯流圧群において有意に低値を示し,心内膜側心筋の超微形態も低灌流圧群において良好に保存された.低灌流圧群において心機能,心筋浮腫及び超微形態が良好に保存されていたことからreperfusion初期の灌流圧は50mmHgが望ましいことが示唆された.

キーワード
Cardioplegia, Reperfusion injury, Cardiopulmonary bypass, 灌流圧, water content

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