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日外会誌. 82(10): 1280-1290, 1981


原著

DMH誘発ラット大腸癌の組織発生に関する研究

鳥取大学 医学部第1外科教室(主任:古賀成昌教授)

宮野 陽介

(昭和56年4月10日受付)

I.内容要旨
化学誘発ラット実験大腸癌の組織発生をあきらかにすることを目的として, dimethylhydrazine(DMH)を投与したドンリュウラットの大腸粘膜をアルシャンブルー液で着色し,実体顕微鏡を用いて拡大観察して微小病巣を見出し,これらについて病理組織学的並びに細胞動態学的観点から検討した.本実験系における腫瘍の好発部位は遠位結腸であり,高分化腺癌が多く発生したが,近位結腸,盲腸では印環細胞癌もみられ,癌の発生部位により組織型に差がみられた. 癌の浸潤が粘膜下層に限局しているものでは高分化腺癌が多かつたが,深達度が深くなるにつれて中分化腺癌,低分化腺癌の占める割合が増加し,分化度は低下する傾向がみられた.腫瘍の表面形態は,粘膜内に限局した小病巣では平坦型を呈するものが多かつたが,粘膜下層に浸潤した病巣では隆起型や隆起+陥凹型が多くみられた.粘膜内に限局した異型腺管巣は,腺管数が少ない微小病巣では異型性が軽度のものが多かつたが,腺管数が増加し病巣が大きくなるにつれて異型性も高度となつた.また,オートラジオグラムによる検索では,腺管の異型性が高くなるにつれて3H-thymidine による標識率が増加する傾向にあり,粘膜内に限局した高度異型腺管巣と粘膜下層に浸潤した癌巣の標識率はほぼ同じ値であつた.
以上の結果から,DMH誘発ラット大腸癌の組織発生は多くは軽度異型腺管巣→中等度異型腺管巣→高度異型腺管巣(または粘膜内癌) →浸潤癌の経路をたどるものと推測されたが, 一部の印環細胞癌はde novoに発生する可能性のあることも示唆された.

キーワード
実験大腸癌, DMH, 組織発生, 色素拡大観察法, オートラジオグラム

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