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日外会誌. 82(10): 1248-1254, 1981


原著

ヒト膵 elastase 1のradioimmunoassay法および膵障害例の血中elastase 1値の検討

大阪市立大学 第1外科

鄭 容錫 , 佐竹 克介 , 梅山 馨

(昭和56年5月1日受付)

I.内容要旨
人膵elastase1のradioimmunoassay Kitを用いてassay の基礎的検討と共に各種疾患とくに膵疾患の血中elastase1値を測定し, その臨床的診断意義について検討を加えた.
結果:本測定法は30ng/dl から5,000ng/dl迄測定可能で,希釈試験,回収率,再現性も良好で臨床的測定に満足すべきものであつた.
急性膵炎10例の平均血中elastase1は2,894ng/dl (±28S.E.) 急性再発性膵炎, 慢性再発性膵炎各々3例では2320ng/dl (±1,004S.E.) 1,933ng/dl (±379S.E.) と正常値に比較して有意の高値を呈した (p<0.05).慢性膵炎9例では平均384ng/dl (±57S.E.) と正常範囲内にあつたが,その内4例に軽度上昇を認め,正常値より低値がみられたものはなかつた.膵炎発作時より血中elastase1値およびamylase値を経日的に比較した結果膵炎発作後より血中elastase1値の変動がより一層臨床症状と一致する様に思われた.膵癌症例では平均852ng/dl (±128S.E.) と高値を示し,特に膵頭部癌10例中9例に高値がみられた.膵全摘患者の血中elastase1値の変動は摘出後漸次低下してくるが,術後3カ月目の検索でも正常下限値を示し測定感度以下にならなかつた.その原因については今後再に詳細に検索する必要があると考えられる.
膵疾患以外の胃十二指腸潰瘍,急性肝炎慢性肝炎,肝硬変症の平均血中elastase1値は正常範囲内であつた. また,膵疾患以外の高アミラーゼ血症では,平均血中elastase1値は533ng/di (±148S.E.) で軽度の高値を示し,特に腎不全患者,胃癌の膵侵潤がみられた患者であつたが,いずれの例においても急性膵炎例や再発性膵炎例の発作時にみられた様な高値はみられなかつた.
以上,人膵elastase1のRIA法は膵に特異的で簡便で,臨床的にとくに急性膵炎,膵癌症例で高値を示す例が多くみられ,膵疾患の診断,スクリーニングに有用と考えられた.

キーワード
膵 elastase 1, 急性膵炎, 再発性膵炎, 慢性膵炎, 膵癌

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