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日外会誌. 82(10): 1236-1247, 1981


原著

肝硬変の外科的治療に関する実験的研究

東京大学 医学部第1外科(指導教官:草間 悟教授)

水田 哲明

(昭和56年4月27日受付)

I.内容要旨
ダイコクネズミ(ラット) にdimethylnitrosamineを投与して肝硬変を作成し,肝葉の約70%を潅流する門脈枝を結紮した後,下記の指標を用いて結紮葉および非結紮葉の動態を検討した.すなわち門脈枝結紮24時間後の肝細胞ミトコンドリア(Mt)呼吸機能, 24および36時間後の肝細胞DNA合成能およびエネルギー充足率,および1週間後の肝組織像を指標とした.また門脈枝結紮後5週間生存したラットでindocyanine green最大除去能(Rmax)を指標として肝機能を観察した.
軽度から中等度の肝硬変ラットで次の成績を得た.すなわち,① 非結紮葉では門脈枝結紮時色調が明赤色となり, 24時間後にはMt呼吸機能の亢進を認め, 24または36時間後にはDNA合成能の亢進を認めた.さらに1週後には著明な再生肥大と組織像の改善が認められた. ② これと対照的に結紮葉では門脈枝結紮時色調がやや暗赤色となり, 24時問後にはMt呼吸機能の抑制が認められ, さらに1週後には著明な萎縮が認められた.③ 肝細胞エネルギー充足率には非結紮葉,結紮葉とも明らかな変化を認めなかつた. ④ 門脈枝結紮5週後にはRmaxの明らかな改善が認められた.
しかし高度の肝硬変ラットでは上記のような代謝変動や非結紮葉の再生肥大を認め難いばかりでなく死亡率も高かつた.
以上より門脈枝結紮術は臨床的に肝硬変の治療に応用し得る可能性があるが,高度の肝硬変例を対象より除外することが重要であると推論し得た.

キーワード
dimethylnitrosamine 肝硬変, 門脈枝結紮, ミトコンドリア呼吸機能, DNA合成能, ICG Rmax

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