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日外会誌. 82(10): 1205-1211, 1981


原著

門脈圧亢進症に対する外科的治療前後の肺生理学的シャント率に関する臨床的研究(第Ⅱ報)

*) 上尾中央総合病院 外科
**) 北里大学 医学部外科

大島 行彦*) , 根本 日普**) , 阿曽 弘一**)

(昭和56年4月13日受付)

I.内容要旨
門脈圧亢進症患者,肝硬変症患者は,門脈循環など局所的な変化だけでなく,全身の呼吸循環動態に種々の変化が認められることがよく知られている.この原因を解明するために,東大第2外科方式による経胸的食道離断術前後の呼吸循環動態を検討した.
特発性門脈圧亢進症症例4例,肝硬変症症例15例の合計19例を対象とし,生理学的肺シャント率, Swan-Ganz Catheterによる各内圧,心拍出量,血管抵抗などを測定するとともに, Closing Volume,一酸化炭素拡散能力,循環血液量.換気血流比などを測定した.
これらはいずれも,特発性門脈圧亢進症症例と肝硬変症症例との間に有意差を認めなかつた.これら食道離断術患者は, 術前において生理学的肺シャント率は増大し,肺動脈圧は増大し, 心拍出量も増大していたが,血管抵抗は正常範囲内であつた. Closing Volume は増大し,一酸化炭素拡散能力は低下したが,換気血流比は正常範囲内であつた.また,循環血液量は増大していた.これに対し,食道離断術後は生理学的肺シャント率は改善し, 心拍出量も減少し, 肺動脈圧も低下し,循環血液量も減少したが,Closing Volume,一酸化炭素拡散能力などは不変であった.
以上より,食道静脈瘤患者の生理学的肺シャント率増大の一因を次のように考える.循環血液量の増大などの影響により,心拍出量が増大する.心拍出量の増大に,間質の浮腫などが加わり肺動脈圧が上昇する.これらにより肺内動静脈瘻が開く.また,門脈肺静脈瘻が形成され,これらにより生理学的肺シャント率が増大するものと考える.

キーワード
門脈圧亢進症, 食道静脈瘤, 食道離断術, 生理学的肺シャント率, 心拍出量

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