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日外会誌. 82(10): 1199-1204, 1981


原著

心筋梗塞後心室瘤の術後長期予後から見た手術適応と手術方法の検討

済生会宇都宮病院 心臓血管外科
*) 現 産業医科大学 第2外科

石倉 義弥*) , 小田桐 重遠*) , 木曽 一誠

(昭和56年4月16日受付)

I.内容要旨
心筋梗塞後心室瘤に対し外科的治療を行ない,術後3~9年(平均69.9カ月)のfollow-upを行なった14例につき,長期予後から手術適応及び手術方法等を検討した.心室瘤切除のみを行なつたもの7例,同時にA-C Bypass術を行なつたもの7例で,手術死亡は1例(7%),遠隔死亡は1例のみであつた.残部心室の機能としてそのEF及び短軸平均短縮率が良好なものは予後も作業能も良好であった.瘤が中隔にまで及んだものは,左室拡張末期容積が術後も変化が殆んどなく大きく,作業能も低下しているものが多い.又他の冠動脈に病変のあるものは出来るだけ同時にA-CBypass術を行なったが,瘤切除のみの症例に比し,短軸平均短縮率の術後の改善度や作業能においてやや良好と思われた.残部心室機能の著しく不良なものは手術適応からはずした方が良い.無症状のものでも,長期の心室瘤の存在が残部心室機能を悪化させるため,残部心室の機能が悪化する前に手術すべきである.非収縮部線維組織は,健常心室が最大限に活用できる様に,縫合部の一部を残してできるだけ切除することが望ましく,中隔部も可能なかぎり切除又は機能的除去をする様心がけるべきである.又50%以上の狭窄のある冠動脈に対しては,できるだけ完全血行再建を心がけ,残部心室機能を可及的改善するのみならず,術中の心筋保護をも留意することが,長期予後に良好な結果をもたらす様である.

キーワード
心筋梗塞後心室瘤, 心室瘤切除, A-C Bypass 術


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