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日外会誌. 82(8): 918-924, 1981


原著

大阪大学病院特殊救急部における来院後24時間以内死亡の疫学的検討
-とくに外傷例の臨床統計から-

大阪大学 特殊救急部

山本 五十年 , 澤田 祐介 , 坂野 勉 , 西出 和幸 , 阪本 敏久 , 吉岡 敏治 , 杉本 侃

(昭和56年3月19日受付)

I.内容要旨
来院後の早期死亡に関する臨床統計は,国内外ともに未だ散見されるにすぎず,早期死亡の実態はほとんど未分析のまま現在に到つている.そこで,早期死亡例減少のための一助として,過去5年間の当科来院後24時間以内死亡例89例を対象とし,とくに外傷例62例につき疫学的検討を加え,以下の結論を得た.
1. 総死亡例(322例)に占める24時間以内死亡例(89例)の割合は27.6%である. 24時間以内死亡例の70.3%が単発・多発外傷で占められ,とくに,多発外傷例は40.4%にものぼる.
2. 転落外傷が24時間以内死亡例で多く認められ,多発外傷例では,交通外傷と比較し転落外傷の方が緊急度が高い.単発外傷例では頭部外傷が84.6%を占める一方,多発外傷例では胸部および腹部の合併受傷率が高い.
3. 死亡原因は,脳死が51.6%,出血性ショックが41.9%であり,出血性ツョック死例は脳死例と比較して短時間死亡が多い.
4. 出血性ショック死例の検討により, 来院後8時間がCritical Time と考えられ, ショックから離脱し得れば,少なくとも24時間以上は生存することが示唆された.
5. 緊急度・重症度の高い病態ほど,受傷後来院までの時間が短かく,かつ,直送例が多く,救急隊において緊急度・重症度の判定が比較的適確になされていると考えられ,大阪府下における選別搬送の効果が検証された.

キーワード
多発外傷, 脳死, 出血性ショック, 選別搬送, 疫学統計


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