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日外会誌. 82(6): 549-565, 1981


原著

全結腸切除,直腸粘膜切除,回腸肛門吻合術後の病態生理
-小腸通過時間と腸内容の変動について-

東京医科歯科大学 第2外科(主任:浅野献ー教授)

今城 眞人

(昭和56年1月28日受付)

I.内容要旨
私共は, 1978年以来,大腸腺腫症および潰瘍性大腸炎に対し, 1期手術として全結腸切除,直腸粘膜切除,回腸肛門吻合兼一時的loop ileostomy造設術を行い,3カ月以降に2期手術としてloop ileostomyの閉鎖術を行ってきた.本術式を施行した大腸腺腫症10例,潰瘍性大腸炎2例において,経時的に小腸通過時間と排泄された回腸内容(24時間便量,便の水分量および電解質)の測定を行い,大腸欠損状態における小腸運動と回腸内容の量的並びに質的変動と,相互の関係について検討した.
小腸通過時間は術前平均6時間17分であつたが, 1 期手術後回腸末端から50~60cm 口側に造設した腹壁のloop ileostomyの状態では,約4時間に短縮し,便量および便水分量は術前よりも大幅に増加した.しかしながら,2期手術によりloop ileostomyを閉じ,回腸肛門吻合部(自然肛門)を通過する排便にかわると,小腸通過時間は平均15時間8分と術前に比べても著明に延長し,それに伴い便量,便の水分量は減少して便の性状は改善した.
術後の便中の電解質の変動は,術前に比べ常にナトリウムおよびクロールの排泄量の増加とカリウムの排泄量の減少を認めた.カルシウムおよびマグネシウムの排泄量には一定の傾向を認めなかった.また,便中へのナトリウム排泄量の変動は, 24時間便量の変動とよく一致した.
術後,小腸通過時間が延長すると, 24時便量, 便水分量及び便中へのナトリウム排泄量は有意 (p<0.001) に減少し,便中嫌気性菌数は有意 (p<0.001) に増加した.

キーワード
全結腸切除・直腸粘膜切除兼回腸肛門吻合術, 小腸通過時間, 便水分量, 便電解質, loop ileostomy

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