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日外会誌. 82(4): 396-405, 1981


原著

膵管結紮犬における膵, ことにラ氏島細胞の変化
-電顕所見を中心に-

大阪市立大学 医学部第1外科

沈 敬補 , 坂崎 庄平 , 橋本 仁 , 西脇 英樹 , 佐竹 克介 , 梅山 馨

(昭和55年9月10日受付)

I.内容要旨
臨床的に膵頭部領域の悪性腫瘍に対して行なわれる膵頭十二指腸切除術に際しての膵管結紮の是非, あるいは慢性膵外分泌障害時の膵内分泌への影響について種々検討されているが, なお一定の見解は得られていない.そこで著者は実験的に膵管完全結紮犬を作成し,結紮後6カ月にわたる膵組織の経時的変化を主として電子顕微鏡的に検討し,併せて結紮6カ月後の犬にアルギニン・グルコースの経静脈的二重負荷を行ないA・B細胞の分泌能を形態学的に検討を加えた.
膵管結紮1カ月後の腺房細胞ではチモーゲン顆粒の変形および減少, ミトコンドリアの膨化や櫛の破壊,粗面小胞体の断裂や槽の拡大,autophagic vacuole等がみられ,腺房細胞の崩壊脱落が著明であった.結紮6カ月後ではこれらの変化はさらに進行し,間質での結合織の増殖も著明であった.膵管上皮系細胞ではよく発達した粗面小胞体やミトコンドリアの増加がみられ,活発な分泌機能を有するようにみえたが,結紮6カ月後では萎縮変性像がしばしば観察された.ラ氏島上皮細胞は膵管結紮1カ月後ではA・B細胞ともに正常膵とほぼ同様の像を示したが,結紮6カ月後では一部のラ氏島内にも結合織の増殖がみられA・B細胞ともに細胞構造の破壊や,細胞の電子密度の高くなった萎縮変性像がみられた.正常膵にアルギニン・グルコース刺激を行なうと, A細胞では顆粒の放出像は認められなかつたが, B細胞は本刺激によく反応し, ゴルジ装置の槽の拡大やempty sack の増加のほか, 基底膜側ではΩ状の開口放出像がみられた.膵管結紮6カ月後では本剌激によく反応するB細胞もみられたが,高度の結合織に囲まれたB細胞ではゴルジ装置の槽の拡大や顆粒の放出像は認められなかつた.以上,結紮6カ月後の膵では外分泌組織障害が著明となるほか,一部のAおよびB細胞には破壊像や刺激に対する反応性の低下が観察された.

キーワード
膵管結紮, 慢性膵障害, 膵A細胞, 膵B細胞

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