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日外会誌. 82(4): 337-341, 1981


原著

開心術後遠隔期にみられる左室心筋の形態変化

順天堂大学 医学部胸部外科

砂盛 誠 , 鈴木 章夫

(昭和55年9月20日受付)

I.内容要旨
開心術中心筋保護法の改良により,術直後の低心拍出症候群の発生頻度は低下しているが,開心術中に避け得ない虚血性心筋障害が開心術後遠隔期の心機能低下の一因となることは,既に諸家により指摘されている.開心術の左室心筋に及ぼす遠隔期における形態変化を明確にするため検討した.対象はリウマチ性弁膜疾患5例で,初回の開心術後4カ月ないし7年後に,第2回目の開心術を要した症例で,第2回手術の際に,左室心内膜側心筋或いは左室乳頭筋を生検し,病理組織学的に検討した.さらにもう1例は,AC Bypass後3カ月に死亡した症例の左室心筋を検索した.加齢による組織変化を除外するため,対象例と同年代のリウマチ性弁膜疾患症例(17例)で初回開心術施行時に左室心内膜側心筋を生検し,対照とし比較した.
結果:リウマチ性弁膜疾患に特有なperivascular fibrosisの他に,diffuse fibrosisが認められた.このdiffuse fibrosisは加齢によるものとは明らかに違つていた.冠動脈疾患例においても,冠動脈狭窄に伴う局所的散在性の線維化像の他に,正常冠動脈に支配される領域にも, diffuse fibrosisが認められた.この症例では,特に,catecholamineによると考えられる心筋細胞の変性像が認められた.
結論:開心術後の生存例においても,開心術中の虚血性変化が開心術後遠隔期にdiffuse fibrosisとして残存する.このdiffuse fibrosisが開心術後遠隔期の慢性心不全に関与することが示唆される.

キーワード
開心術, 心筋保護, 左室心筋, 心筋線維化, リウマチ性心筋炎

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