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日外会誌. 82(4): 324-336, 1981


原著

同系移植腫瘍に対する免疫賦活剤の抗腫瘍効果に関する実験的研究

慶応義塾大学 医学部外科学教室(指導:阿部令彦教授)

山田 好則

(昭和55年11月10日受付)

I.内容要旨
20-methyIcholanthrene誘発の同系線維肉腫 KKN-1を BALB/c nu/nuおよび nu/+マウスに移植 し,実験的免疫療法ならびに免疫化学療法を行つた.免疫賦活剤はOK-432(50K.E./kg)およびlevamisole(lmg/kg) を使用した.
nu/nu, nu/+における抗腫瘍効果をみると, nu/nuでは両薬剤とも無効,nu/+においてのみ効果が示され,両薬剤の作用機作に胸腺・T細胞が強く関連していることが示唆された.
両薬剤ともin vivo投与で,担癌nu/+マウスの脾細胞のT cell mitogenに対する芽球化能を増強,回復させることが示された. OK-432はmitogen非添加での芽球化の増加が著明であった. in vivo 中和試験でも,各薬剤により治療を受けたnu/+マウス脾細胞に腫瘍中和能のあることが示唆された.
nu/+マウスにおける投与時期別の抗腫瘍効果は,両薬剤ともDay 1からの5日間の投与で効果が認められ,Day 6から5日間の投与は無効であり,早期投与が優れていた.また, OK-432は腫瘍移植前5日間投与でも効果を示し,無効であつたlevamisole との相異点と考えられた.
Mitomycin-Cの単独無効量である0.5mg/kgまたは1.0mg/kg のDay 5,6投与に,各薬剤のDay 1~5またはDay 6~10併用を検討した. OK-432併用では,Day 1~ 5投与は併用効果が認められず, Day 6~10併用投与で高い抗腫瘍併用効果が得られ,併用の時期の重要性が示された.levamisoleとの併用では,その投与時期による差がなく, 相加効果のみが認められた.
本実験系が抗腫瘍免疫賦活剤の検定,評価の実験モデルとして有用であると考えられた.

キーワード
免疫賦活剤, 抗腫瘍効果, 同系腫瘍, 免疫化学療法, nu/nu・nu/+マウス


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