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日外会誌. 82(4): 316-323, 1981


原著

経静脈栄養下におげる血清亜鉛,血清アルブミン,腸管Collagen-Hydroxyproline量の変動に関する実験的研究

三重大学 医学部外科学第2講座(指導:鈴木宏志教授)

森 孝郎

(昭和55年10月24日受付)

I.内容要旨
経静脈栄養中における血清亜鉛の変動を実験的に検討するとともに,亜鉛が蛋白代謝および創治癒に密接な関係を有することに着目し,血清亜鉛,血清アルブミン, および腸管Collagen-Hydroxyproline量の関係について検討を行った.実験には雑種成犬46頭を用い,経静脈栄養のみで飼育した36頭(亜鉛補給群14頭,亜鉛非補給群22頭)を対象とし,経口摂取にて飼育した10頭を対照群とした.その結果, 1) 実験開始前の血清亜鉛値は,対照群,亜鉛補給群,亜鉛非補給群ともに有意差を認めなかつたが,亜鉛非補給群では経静脈栄養開始後1週より低値を示し,第2週も低値を維持した.亜鉛補給群の血清亜鉛値は,経静脈栄養施行後第1週, 第2週ともに高値を示した.2) 実験開始前の血清アルブミン値は対照群,亜鉛補給群,亜鉛非補給群ともに有意差をみとめなかつたが,亜鉛非補給群では経静脈栄養開始後第1週より低値を示し,第2週もさらに低下した.これに対して亜鉛補給群では開始後第2週までの低下はわずかなものにとどまつた.また血清亜鉛値と血清アルブミン値の間には,経静脈栄養犬では正の相関関係を認めた.3) 対照群の回腸腸管Co!lagen-Hyroxyproline量は2.18±0.14μg/mgであつた. 亜鉛補給群では縫合部周辺の腸管のCollagen-Hydroxyproline 量は対照群に比して著明に増加しており,非損傷部位では対照群と有意な差を認めなかつた.これに対して亜鉛非補給群の腸管Co!Iagen-Hydroxyproline 量は縫合部では対照群より有意に高値を示したが,亜鉛補給群における縫合部腸管のそれと比較すると有意に低値であつた.縫合部から3~5cm隔つた非損傷部位では対照群よりも低い値を示した.また経静脈栄養犬における腸管縫合部周辺のCollagen-Hydroxyproline 量と,血清亜鉛値および血清アルブミン値の間には正の相関関係が認められた.

キーワード
経静脈栄養, 亜鉛欠乏, 腸管Collagen-Hydroxyproline量

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