[書誌情報] [全文PDF] (5977KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 82(3): 262-270, 1981


原著

ラット再生肝における過酸化脂質の研究

岡山大学 第1外科(主任:折田薫三教授)

上田 興太郎

(昭和55年8月22日受付)

I.内容要旨
ラット肝約70%切除後の残在肝再生過程において経時的に再生肝を摘出し,肝実質および血中の過酸化脂質を測定した.同時に脂質過酸化を防御する反応に関与するSuperoxide disumutase (SOD),Catalase,Glutathion peroxidase (GSH-Px) およびα-Tocopherol (Vitamin E) の変動についても観察した.
再生肝homogenate の過酸化脂質は術後6時間より増加がみられ, 18~24時間後に最高となり対照値の約7倍にも達した. その後しだいに低下して5日後ほぼ対照値に復した. 一方血中過酸化脂質の変化は肝homogenate のものとは逆のパターンをとり, 術後急速に減少した. その後しだいに増加して3日後に最高値がみられ対照値の約70%となつたが,7日後でもなお低値であり,対照値の50%にとどまつた.再生肝SOD 活性は1日後から10日後までの値がほぼ対照値と変らず,有意の差はみられなかつた.再生肝Catalase活性は1日後から対照値の約60%に低下し, 10日後までほぼ同値であつた. また再生肝GSH-Px活性は術後しだいに低下して, 5日後ではほぼ対照値に回復した. 再生肝Vitamin E の変化は,1日後では低値のため測定不能であり,2日,3日後では対照値の約10%まで上昇した.その後も増加して5日, 10日後では対照値の約60%まで回復した.
このように再生初期の肝では脂質過酸化物が産生されやすい状態にあること,および脂質過酸化物は肝実質と血中とでは逆の関係にあることが判明した. 防御系の因子ではVitamin E が最も著明な変化を呈した.またVitamin E 欠乏ラット再生肝において過酸化脂質量の著しい増加が認められたことより,Vitamin Eは防御系の主要な役割を演じているものと推測され,過酸化脂質とともに肝再生に大きく関与しているものと考えられる.

キーワード
再生肝, 過酸化脂質, スーパーオキシドディスムターゼ, カタラーゼ, ビタミンE

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。