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日外会誌. 82(3): 252-261, 1981


原著

小腸広範切除術後の胃液分泌とガストリン動態に関する実験的研究

鳥取大学 第1外科(主任:古賀成昌教授)

岸 清志

(昭和55年7月13日受付)

I.内容要旨
小腸広範切除術の胃液分泌に及ぼす影響をみるために,犬を用い小腸上部75%および下部75%切除を行い,胃液分泌と血清ガストリン測定を行つた.また,小腸におけるガストリン不活化を検討する目的で,上腸間膜動静脈血中ガストリン値を測定した.
食餌刺激による胃液分泌は,上部75%切除後に増加し,下部75%切除後には減少する傾向にあつた.一方,血清ガストリン値は上部75%,下部75%切除後,ともに高値を示す傾向にあった. AOCーテトラガストリン刺激による胃液分泌は,上部75%切除後に増加する傾向があり,ガストリンに対する壁細胞の感受性亢進が示唆されたが,下部75%切除後には一定の傾向はなかつた.
食餌刺激による上腸間膜静脈血中ガストリン値は,動脈血中のそれに比べて低値を示す傾向にあり,小腸によるガストリンの不活性化が考えられた.また,アセチルコリン剌激による上部75% および下部75%分節小腸でのガストリン不活化能には差がみられなかつた.
以上より,小腸上部75%切除後の胃液分泌亢進は,ガストリン不活化能の欠如にもとづく血清ガストリン値の上昇,さらには壁細胞のガストリンに対する感受性亢進などが関与しているものと推察される.

キーワード
小腸広範切除, 胃液分泌, 壁細胞, ガストリン, ガストリン不活化

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