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日外会誌. 82(3): 215-219, 1981


原著

良性結節性甲状腺腫の術後経過

1) 伊藤病院 
2) 慶応大学 医学部病理学教室

森 秀樹1) , 三村 孝1) , 浜田 昇1) , 百渓 尚子1) , 西川 義彦1) , 伊藤 國彦1) , 細田 泰弘2) , 薬丸 一洋2)

(昭和55年8月18日受付)

I.内容要旨
甲状腺の良性結節の術後再発について検討した.対象とした症例は,昭和49年に本院で手術を行い良性腫瘍と診断された526例中follow-upできた279例と,昭和53年に本院で再手術を行つた症例中初固手術時の病理組織所見の明らかな46例である.
術後5年で再発がみられたものは279例中42例15%であり,この42例のうち良性結節は41例(14.7%),癌は1例(0.3%)であつた. 再発結節は全例,くるみ大以下で自覚症状はみられなかつた.甲状腺結節の家族歴を有する症例に再発が高い傾向がみられた.初回手術が腺腫であつた106例ては9例(8.5%)に,腺腫様甲状腺腫では135例中28例(20.7%)に, 嚢腫では38例中4例(10.5%)に内発がみられ,腺腫様甲状腺腫の再発率は腺腫に較べ推計学的に有意に高率であつた.手術術式についてみると,核出を行つた症例と腺葉切除を行つた症例の再発率は,それぞれ腺腫で61例中5例(8.5%),41例中4例(7.8%),腺腫様甲状腺腫で41例中11例(26.2%),44例中12例(27.3%),嚢腫で25例中3例(12.0%),13例中1例(7.7%)であり,腺腫様甲状腺腫と腺腫との間に手術術式による再発率に有意の差がみられた.また腺腫様甲状腺腫で亜全切除を行つた50例では再発は5例(10%)であり,核出あるいは腺葉切除例との問に有意の差がみられた.
再手術例についてみると初回手術時,腺腫の18例中16例,腺腫様甲状腺腫の24例中23例,嚢腫の4例中4例が再手術時には,腺腫様甲状腺腫と診断された.
良性結節性甲状腺腫の手術に際しては,単一結節であつても術中充分な検索を行し,腺腫様甲状腺腫と診断できた場合は亜全切除を選ぶことが必要であると考えられる.

キーワード
甲状腺腺腫, 腺腫様甲状腺腫, 甲状腺囊腫, 良性結節性甲状腺腫の再発


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