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日外会誌. 82(1): 1-11, 1981


原著

血液透析下腎不全例の循環動態

福島県立医科大学 第1外科(主任:本多憲児教授)

羽田 一博

(昭和55年6月17日受付)

I.内容要旨
慢性腎不全患者に対する血液透析療法(以下H.D.)をより安全に施行するため, H.D.にともなう循環動態に関する諸問題をSwan-Ganz Catheter(以下S.G.C.)を用いて解析し,H.D.施行上の指針作製を目的とした.
教室および郡山日東病院においてH.D. を施行した75例中24例を研究対象とし,シャント造設前後,H.D.導入期,維持期の各期にわたり系統的にS.G.C. を用いて循環動態を分析し以下の成績を得た.
1. 外シャント造設前後の成績:外シャントの循環動態に及ぼす影響はc.o.の増加とTPRの減少であつたが,その影響は軽微であつた.
2. 導入期の成績:肺動脈楔入部圧(以下PWP)の基準値を10mmHg,心拍出量指数(以下C.I.)の基準値を4.5L/min/M2としてH.D.症例の循環動態をH型(低PWP,高C.I.),D型(低PWP,低C.I.),O型(高PWP,高C.I.),C型(高PWP低C.I.)の4型に分類した.H型は最も多くみられ,全身状態良好で, H.D. 中の循環動態も比較的安定しており慢性腎不全患者の定型的循環動態と考えられた.D型はhypovolemiaを意味し,脱水傾向のある患者にみられた.O型はoverhydrationを意味し,浮腫の著明な例にみられた. C型は心機能低下傾向を意味し,肺浮腫のある例にみられた.
3. 維持期の成績:維持期においても前記のH型がみられ,意味する循環動態も導入期と同じであつた.H.D.時の循環動態はH型は比較的安定し,D型はH.D. induced hypotensionに陥りやすく,O型およびC型はH.D. により循環動態は著明に改菩した.
4. H.D. induced hypotension は5例にみられた.

キーワード
腎不全, 血液透析, Swan-Ganz Catheter, 循環動態, H.D. induced hypotension


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