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日外会誌. 81(12): 1585-1589, 1980


原著

高度の心,脳血行障害を合併した,下肢の閉塞性動脈硬化症の血行再建

名古屋大学 医学部分院外科

仲田 幸文 , 塩野谷 恵彦

(昭和55年4月11日受付)

I.内容要旨
1967年5月から1979年8月迄の期間に,四肢の閉塞性動脈硬化症98名,145肢に血行再建手術を行った.このうち,高度の心・脳血行障害を合併するものは34名,34.7%を占めていた.著明な心筋障害,心房細動等,心機能不全25名,脳血行障害による半身不随が5名で, 更に4名が両方を合併していた. 又,高血圧が29名(85.3%)に,肝又は腎機能不全が21名(72.4%),糖尿病が4名(11.8%)に合併していて,poor riskであった.年齢は, 52-72歳,平均67.8歳.男性27名,女性7名で,最長80カ月,平均19.4カ月間,全員の観察を行った.手術は,全身麻酔による開腹で10肢,非開腹で10肢,局所麻酔で31肢の合計51肢に対して,血行再建を行った.
開存率は, 1カ月73.9%,6カ月56.4%,1年53.4%,5年43.7%で,早期閉塞が多かった. 生存率は,6カ月80.8%,1年69.5%と急速に低下し, 5年では,僅かに32.1%であった.死因は,心不全57.1%,腎不全19.0%,脳血行障害9.5%,肝不全9.5%,悪性腫瘍4.8%で,心,腎不全が76.2%を占めていて,この術後管理の重要性を示していた.
心機能不全者のうち,全身麻酔・開腹によって血行再建を行った6名中4名が死亡している事から,高度の心機能障害者には,全身麻酔・開腹による血行再建は,さけるべきである.長期生存率が低い事からも,数年間の機能保持を目的にすればよく, extraanatomic bypassを18肢, 35.3%に行ったが,無理をしない事が大切である.同一肢に対して2回以上の再手術8名中,生存者は3名で,長期生存者はない.3回以上の手術者3名は,すべて7カ月以内に死亡した. 一方,手術時間,出血量と,生存率に関係がなかった事から,最初の手術は丁寧に行い,失敗例では, 切断を第ー選択とすべきであろう.Major amputationは,手術を行った40肢中9肢, 22.5%に行われた.

キーワード
閉塞性動脈硬化症, 心機能不全, 脳血行障害, 血行再建, 予後


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