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日外会誌. 81(10): 1301-1314, 1980


原著

心疾患患者の免疫と栄養

岡山大学 医学部第2外科(指導:寺本滋教授)

陳 鋼民

(昭和54年12月5日受付)

I.内容要旨
1) 心疾患患者91例について術前の免疫動態や栄養状態について検討した.
2) 開心術症例を中心に42症例で術前から術後にかけて免疫動態を検討した.
3) 心疾患術後の死亡症例と皮内反応の相関について検討した.
4) 術前皮内反応陰性症例3例に静脈栄義を施行し,施行前後の免疫動態を検討した.
5) 検査項目は末梢リンパ球数およびリンパ球PHA,Con A,PWM幼若化反応, PPD,PHA,Candida,SK-SD皮内反応,免疫グロブリンIgG,A,M 体重身長比,上腕筋肉直径比,上腕皮下脂肪厚比, 赤血球数,ヘモグロビン量,ヘマトクリット値,白血球数,血清アルブミン量である.
以下の結果を得た.
① 術前すでに臨床重症度(NYHA)分類III―IV度症例では遅延型皮内反応(PPD,PHA,Candida,SK-SD) の低下とPHA,Con A,PWMなどの非特異添加リンパ球幼若化反応の低下を認めた.
② 重症心疾患息者NYHA分類III―IV度症例では術前すでに末梢赤血球数,ヘモグロビン量,血清アルブミン量,上腕筋肉直径比などの栄養学的示標の低下を認めた.
③ 開心術後の早期死亡は重症度分類NYHAIII―IV度の弁置換術症例に多く,かつそれらの症例は皮内反応が低下していた.
④ 開心術は免疫能に影響を与え,術後一過性に細胞性免疫能の低下がみられた.その回復は一様でなく,先天性心疾患根治術では術後1週間で回復したが,僧帽弁交連切開術では2週ないし3週,弁置換術では1カ月以上を要した.
⑤ 術前の補助静脈栄養を重症心疾患患者3例に施行した結果,遅延型皮内反応の上昇が認められた.

キーワード
重症心疾患患者, 細胞性免疫, 体液性免疫, 栄養不良, 開心術と免疫能


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