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日外会誌. 81(8): 766-781, 1980


原著

急性閉塞性化膿性胆管炎に関する臨床的並びに実験的研究
-とくに肝循環動態と胆道内圧との関係を中心として-

日本医科大学 第1外科(主任:代田明郎教授)

山口 健次

(昭和54年11月26日受付)

I.内容要旨
急性閉塞性化膿性胆管炎18例の臨床的検討を,死亡14例中剖検なし得た11例の死因を中心に行うとともに,本症にしばしばみられる重篤なショックの発来に重要な役割を果すendotoxin(ET)が胆道より果して血中に流出するか否かについて,主として肝循環動態と胆道内圧との関係を中心に実験的研究を行つた.
臨床症状としてReynoldsの5徴は全例に認められたが,このほか乏尿をきたしたものが14例,77.8%と高頻度を示した.胆汁中からはE. coliを中心とするグラム陰性桿菌が全例に検出され,血中細菌検出率, limulus test陽性例はともに25.0%を示していた. 剖検11例の胆道閉塞の原因として最も多かつたのは結石8例,72.7%で,全例が多発性肝膿瘍を形成し,いわゆるショック腎を呈したもの8例,72.7%で,これらの死因はいずれも肝腎不全で表現されたショックと解された.
実験的にウサギの閉塞胆管内にET 2mg/kgあるいはE. coli 0ー26 107/mlを投与すると,血中にET が出現する事実が感作血球凝集阻止反応と,limulus testにより確認された.胆道閉塞直後のイヌ胆管内 にET 5mg/kg, 10mlを注入しても, 対照の生理食塩水(生食水) 10mlを注入した場合と同様肝循環動態の変動は殆んどみられないが,あらかじめ生食水を注入して胆道内圧を400~550mmH2O と上昇せしめたのち同量のETを投与したり, あるいはまたまずET投与後生食水を注入して胆道内圧を上昇せしめると,門脈圧の著しい上昇その後低下,門脈血流量,肝動脈血流量の著しい減少,これら血管の末梢抵抗の増大をきたし,血圧は下降してショック状態に陥いり,20~50分後死亡した.胆道閉塞5~7日後, および7週後のイヌの胆管内に同量のETを投与すると,上述と同様の肝循環動態の変動をきたして30~90分後に死亡し, その変動はイヌ静脈内にETを投与したさいのそれに極めて類似していた. なおこのさい末梢血のlimulus testは陽性を示した. E. coli 0-26投与の実験でも同様の成績を得た.

キーワード
急性閉塞性化膿性胆管炎, 肝循環動態, 胆道内圧, endotoxemia, Junctional complex

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