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日外会誌. 81(7): 622-631, 1980


原著

大動脈瘤手術前後におけるSwan-Ganz Catheterによる循環動態に関する研究(各種外科的疾患におけるSwan-Ganz Catheterによる術前,術後循環動態に関する研究-第6報)

福島県立医科大学 第1外科教室(指導:本多憲児教授)

安藤 正樹

(昭和54年9月29日受付)

I.内容要旨
大動脈手術においては大動脈遮断を要するためにafterload が急激に増加し循環動態に大きな変化を来し, しかも大動脈瘤症例では動脈硬化症が進みpoor risk症例が多いので,大動脈瘤手術前,術中,術後における循環動態を把握することは重要である.
胸部大動脈瘤4例, 腹部大動脈瘤7例, 計11例についてSwan-Ganz Catheterを用い術前,術中及び術後に循環動態を測定した.測定値より作成した循環動態図は正常型,hypovolemia型,心不全型,hyperdynamic型, overhydration型の5型に分類された.
術前循環動態図ではいずれもほぼ正常型を示したが胸部大動脈瘤,腹部大動脈瘤各1例でhyperdynamic傾向, 腹部大動脈瘤1例でhypovolemic傾向を示した.
術中循環動態図の変化は麻酔導入時には心不全型を呈し,手術開始70分後にはoverhydration型,大動脈遮断10分時にはTPR に突起を有する正常型, 大動脈遮断20分時にはTPR,PWP に突起を有する正常型を呈した.大動脈遮断40分時にはほぼ正常型となったが大動脈遮断60分時にはhypovolemia 型を呈した.declamping shock の予防として補液,輸血を行ない大動脈遮断を解除した20分後の循環動態図はoverhydration 型で血圧低下はみられなかつた.総腸骨動脈解除20分後には補液,輸血を制限したにもかかわらずoverhydration型を星した.
術後循環動態図は術前,術直後の循環動態にかかわらず術後1日の循環動態図がhyperdynamic型を示したH群,正常型を示したN群及び心不全型を示したC群に分類された.H群では術直後の循環動態図ではいずれもhyperdynamic型を呈し術後経過は良好であつた.N群では術直後の循環動態図はhyperdynamic型正常型及び心不全型がみられたが術後1日には正常型となった. c群では術直後はoverhydration型及びhypovolemia型を示し,術後1日には心不全型となり予後不良であった.

キーワード
大動脈瘤, 循環動態図, 大動脈遮断, 大動脈遮断解除, Swan-Ganz Catheter

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