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日外会誌. 81(6): 549-555, 1980


原著

Computed Tomography (CT)による急性一酸化炭素中毒の頭蓋内病変の研究

大阪大学 特殊救急部

澤田 祐介 , 小林 久 , 杉本 寿 , 大橋 教良 , 高橋 道知 , 吉岡 敏治 , 杉本 侃

(昭和54年8月1日受付)

I.内容要旨
重症急性一酸化炭素(CO) 中毒患者19例に対し, Computed Tomography (CT) を用い,早期より経時的に頭蓋内病変を検索することにより,淡蒼球の対称性low density の出現という, CO中毒に特異的な変化をとらえることができた.本研究はこの病変の実体と,この所見を呈した症例の予後につき検討したものである.
症例は来院時Glasgow Coma Scale 7以下の重篤な意識障害を有する新鮮例である.全例に気管内挿管による呼吸管理を行なうとともに,高気圧酸素療法(OHP)を実施した.CTは来院後可能な限り早期より,最長1カ年にわたり延べ38回follow upを行なつた.予後はGlasgow Outcome Scale に従い判定した.
全19例は初回CTにより,淡蒼球に一致した対称性のlow densityと,大脳白質特に側脳室後角近傍の広汎なlow density areaの認められた群10例(有所見群) と,それらの所見の得られなかつた群9例(無所見群)とに明瞭に区別された.初回CTで明らかに認められた有所見例の淡蒼球のlow densityは,頻回のOHPにも拘らず数カ月,最長1カ年後のfollow upにても認められた. CT所見と予後の関係を見ると,両群各々1例づつの例外を除き,有所見例は予後不良,無所見例は予後良好であつた.
CO中毒の脳病変は,病理学的に大脳白質の広汎な軟化・壊死・汎発性脱髄と,淡蒼球の壊死・脱髄が指摘されており,主病因としてhypoxiaが強調されている.しかし大脳白質と淡蒼球が同時に侵されることは極めて稀であり,ある種の薬物中毒の報告が僅かに見られるにすぎず,これらの病因をhypoxiaのみに帰することは難かしい.
急性CO 中毒症例に対し早期よりCT検査を行ない特異的な変化をとらええた.長期のfollow up study より,この病変の実体と病因につき考察を加え,長期予後との関係を論じた.

キーワード
CO中毒, CT, 淡蒼球大脳白質, 脱髄

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