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日外会誌. 81(4): 330-337, 1980


原著

Manometric studyからみた直腸癌に対する括約筋保存手術の考察

京都府立医科大学 第1外科学教室
*) 社会保険神戸中央病院 外科

岩井 直躬 , 橋本 京三 , 柳原 潤 , 荻田 修平 , 西岡 文三 , 藤田 佳宏 , 間島 進 , 落合 準三*)

(昭和54年7月19日受付)

I.内容要旨
比較的早期の直腸癌に肛門機能を保存する手術を行なう機会が多くなつてきたが,排便機能の悪い自然肛門は日常生活の妨げとなる.そこで,直腸癌に対する肛門機能保存手術後の排便機能を客観的に評価する目的で, 低位前方切除16例・腹仙骨式直腸切除1例・貫通術式(Bacon法) 3例の計20例について,術前及び術後の直腸肛門静止内圧及び直腸肛門反射の有無が経時的に測定され,これらのmanometric study の成績と臨床評価の成績とが比較検討された.その結果, manometric study の成績は術後の排便状態を良く反映すると共に,排便障害機構の解析に有用な所見を提示するものが認められた.すなわち,低位前方切除術の臨床評価‘‘Good’'例では,術後早期より肛門管に一致して著明なhigh pressure zone,充分な直腸肛門内圧差及び直腸肛門反射が認められた. 一方, 何らかの排便異常が認められた症例では,manometrical にこれらのパラメーターのどれかが欠けていた. しかし,臨床評価の改善とともにこれらのパラメーターもGood例と同じく認められる様になった.括約筋保存手術後の患者の最大の愁訴は社会生活が制限されることである.すなわちcontinence保持ができるかどうかである.このcontinence保持には肛門管における充分な長さ及び高さをもつhigh pressure zoneの存在が.直腸肛門反射が出現することよりもより重要であると思われた.

キーワード
Manometric study, 括約筋保存手術, 直腸癌

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