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日外会誌. 81(4): 291-298, 1980


原著

上皮小体癌の臨床病理学的検討

筑波大学 臨床医学系外科

江崎 昌俊 , 藤本 吉秀 , 小原 孝男 , 相吉 悠治 , 伊藤 悠基夫 , 金沢 暁太郎

(昭和54年7月19日受付)

I.内容要旨
上皮小体機能充進症を呈する上皮小体癌は,従来稀な疾患とされてきたが,血清カルシウム測定が簡便化されるにつれ少なからず経験されるようになり,その臨床病理学的概念や外科治療上,特殊な考慮を必要とするようになつてきた.我々は過去12年間に100例の原発性上皮小体機能亢進症を経験し, そのうちの6例が癌であり,以下の結論を得た.
(1) 血消カルシウム測定の簡便化に伴い,上皮小体癌とはいえ,必ずしも重篤な臨床像を呈せず,局所においても比較的限局した早期例が経験されるようになつた.
(2) 症状は非顕性型から激しい高カルシウム血症状を呈するものまでさまざまである.
(3) ホルモン産生腫瘍の認識をもつことが重要であり,血清カルシウムが14mg/dl以上の場合には,待期的治療の困難性と高カルシウム血症クライシスの危険性を考え,緊急手術を必要とする事態を念頭において,必要最小限の検査を早急に行なうこと.
(4) 初回手術で癌と見抜き,癌としての根治手術を行なうことが予後に大きく影響する.上皮小体癌と腺腫の鑑別をするのに術中の肉眼所見が重要である.早期においては,球形で白色を帯びた硬い腫瘤の場合,浸潤がなくとも癌を念頭において手術を行なう必要がある.
(5) 早期症例においてはリンパ節転移は少ないが,症例によつては局所における浸潤傾向が強く,周囲の組織を十分に含めた摘除が必要である. radical neck dissectionに関しては必ずしも必要でない.
(6) 再発は局所に起るものが大部分である.現在6例の患者はいずれも生存しているが,これまで3例に再発のため再手術を必要とした.完全摘除あるいは再発の指標として,血清カルシウム値の正常化あるいは術後の再上昇がもつとも手つとり早く,確実である.

キーワード
上皮小体癌, 原発性上皮小体機能亢進症, ホルモン産生腫瘍, 上皮小体ホルモン, 高カルシウム血症


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