[書誌情報] [全文PDF] (8085KB) [会員限定・要二段階認証][検索結果へ戻る]

日外会誌. 81(1): 1-14, 1980


原著

外科的疾患に於ける赤血球内カリウム値に関する研究殊にGIK療法の意義

福島県立医科大学 第1外科教室(指導:本多憲児教授)

岡野 誠

(昭和54年5月7日受付)

I.内容要旨
I 研究目的 教室に於ける術後代謝研究の一環として,外科的疾患1155例に就いて赤血球内Kalium値(R-K)を測定,興味ある知見を得たので報告する.
II 症例及び研究方法 非癌性疾患739例(64%),癌性疾患416例(36%), 対照として健康成人37例 を対象とした.R-K値測定は1%サポニンに依る全血溶血後,炎光比色法にて測定, 血清Kalium値 (S-K) も炎光比色法にて測定した.
Ⅲ 成績
1) 健康人及び外科的疾患例にて一般状態良好例の術前R-K値は130±12mEq/Lで,脱水,黄疸等の 合併症があつたものではS-K値が正常閾に在つてもR-K値は低値を示した.
2) R-K値術後変化は,変化ないか又は最低118mEq/Lまで低下したが一過性であつた正常群861例 (75%), 118mEq/L以下を示した低値群294例 (25%) に分けられた.
i) 術後正常群では経過順調であつた.
ii) 術後低値群のうち127例 (11%) はR-K値は一過性に118mEq/L 以下となつたが直ちに回復,順調に経過した. 84例(7%) では術前より低値を示し,術後長期に亘り100~118mEq/L を示した死亡例で,R-K低値時の症状記載不明例である.
iii) 術後低値群294例中83例 (7%) ではR-K低値時に明識不能,傾眠,譫妄等の脳症状,心電図上心房細動,腸管麻痺等の合併症がみられた.うち46例(4%)に対してはKalium単独補給を行い,直接死14例を除く32例ではR-K値上昇, 症状消失に長期を要した.37例(3%)に対してGlucose-Insulim- Kalium療法,又はGlucose-Insuin療法を行い,直接死4例を除く33例では12~24時間にR-K値上昇,症状の急速な改善をみた.
iv) R-K低値でS-K値 5.5mEq/L未満の時Glucose 0.6~1.2g/kg,Insulin 0.3~0.7u/kg,Kalium 0.3~0.8mEq/L のGIK療法,S-K値 5.5mEq/L以上の時にはGlucose 0.6~1.2g/kg,Insulin 0.3~0.7u/kg のGI療法を行い著効を得た.

キーワード
赤血球内カリウム値(R-K値), 脳症状例, 心房細動例, 腸麻痺例, GIK及びGI療法

このページのトップへ戻る


PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。