日外会誌. 43(9): 1145-1195, 1942

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その他

「アルコール」注射ノ切斷端神經腫形成ニ對スル作用ニ就イテノ研究

I．内容要旨
四肢ノ切斷後全然疼痛ヲ訴ヘズ經過スル場合アルモ，又切斷後2乃至3週間ノ疼痛ナキ中間期ノ後，持續性ノ激シキ疼痛ヲ訴フルコトアリ，而シテ切斷端神經腫ノ存在スル時ニ最モ激シク特ニ重症ナルモノヲ，1864年 Weir Mitschell ハ Kausalgieトシテ記載セリ．扨テ切斷端神經腫ノ形成ヲ阻止セントシ種々ノ方策ガ講ゼラレ，ソノ數實ニ枚擧ニ遑アラザレ共，何レモ無效ナル場合アリテ確實ナル效果ヲ擧ゲ得ザリキ．余ハ四肢切斷後ノ神經痛性疼痛ヲ豫防スルニハ次ノ方法ガ操作簡單ニシテ且最良ナル方法卜信セリ．即チ神經切斷端ノ骨組織トノ癒著或ハ切斷搬痕組織内ヘノ介入ニヨリ神經ノ牽引サルゝヲ防ギ，且創傷分泌物ノ神經刺戟ヲ防ガンガタメ可及的高位ニテ切斷スベク神經ヲ充分ニ引キ出シ，一方切斷端神經腫ノ形成ヲ阻止センガタメ神經内ニ90％「アルコール」ヲ1.0乃至2.0竓注射シ，ソノ末梢端ニテ切斷セリ，而シテ悪性腫瘍，外傷竝ニ骨折，脱疸等11例ノ切斷術ニ際シ同法ヲ施行シ24日乃至19ヶ月平均7.8月ノ經過ヲ觀察セシニ唯1例ニ於テ輕度ノ神經痛性疼痛ヲ訴ヘシノミニテ他ハ全ク疼痛ヲ訴ヘズ，更ニ犬ヲ用ヒ下肢ヲ切斷スルコトナク同様ナル方法ニテ坐骨神經ヲ切斷セリ．對稱トシテ「アルコール」ヲ注射セザリシモノニ於テハ神經繊維ノ變性ハ多クハ切斷端ヨリ1糎内外ニ及ブニ過ギズ且24日以上經過セシモノハ著明ナル切斷端神經腫ノ形成アリ．之ニ反シ90％「アルコール」ヲ注射セシモノニ於テハ注射部ノ神經繊維ハ壊死ニ陷リ1ヶ年ヲ經過スルモ切斷端神經腫ノ形成ナク，ソノ變性少ナクトモ切斷端ヨリ3乃至5糎多キトキハ8糎或ハ其以上中櫃ニ及ブコトヲ知レリ．以上ノ事實ヨリ切斷時90％「アルコール」ヲ神經繊維ノ變性壊死ニ陷ル可ク充分ニ即チ1乃至2竓ヲ注射スレバ切斷端神經腫ノ形成及ビソレニヨル障碍ヲ完全ニ豫防シ得ルノ確信ヲ得タリ．

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