日外会誌. 43(5): 635-649, 1942

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その他

顎骨琺瑯腫11例ノ觀察

I．内容要旨
余ハ昭和5年以来11年間ニ齋藤外科敎室ニテ入院手術セル顎骨琺瑯腫11例ヲ観察セリ．
性別ハ男性4例女性7例ニシテ，發生部位ハ上顎1例，下顎10例ナリ．下顎ニテハ全部其隅角部ニ發生セリ．
初發見年齢最低13歳，最高57歳ニシテ20歳ヨリ50歳迄發生率大差ナシ．經過ハ極メテ緩慢ニシテ初診時迄ノ最長年數ハ22年ナリ．其間大シタ障碍ナケレド多クハ抜齒，切開，掻爬等ヲ受ク腫瘍ノ大サハ鶏卵大ヨリ小兒頭大ニ及ブモ其大サハ經過トヨク一致セズ．表皮ニ變化ナク硬度ハ種々ナリ腫瘍表面凹凸アルモノ多ク，波動，羊皮紙様捻髪音等ヲ觸ルゝモノアリ．
口腔内ニ潰瘍ヲ形成セルモノ3例アレド共ニ抜齒，切開等ニヨリ生ゼルモノナリ．腫瘍部ノ齒牙モ殆ド缺如スレド之レモ亦上記處置ニヨルモノ多ク眞ノ缺如齒ハ3例ノミ，共ニ埋伏シアリ．所謂淋巴腺ノ腫脹セルモノアレド轉移ニアラズ．全身状態ニ變化アルモノヲ認メズ．
「レ」線所見ハ診斷上極メテ重要ニシテ，多數ノ嚢胞ヲ見，特ニ蜂窼様構造ヲ呈スルアラバ診斷ハ確實ナリ．
病理組織學的所見ハ實質性卜嚢胞性トニ區別セラルゝモ共ニ外層ハ圓柱狀細胞，内部ニ多少トモ星狀細胞ヲ有スルハ特有ナリ．2例ニテ口腔粘膜ト連絡シ，更ニ2例ニテ癌眞珠ヲ認メタリ．特ニ癌化轉移形成等ハ認メザルモ癌眞珠アル1例ニテハ臨牀上ノ所見ヨリ悪性化卜考フ．再發ハ2例ニテ認メタリ．
治療法ハ早期ニ根本的切除ヲ要シ特ニ手術前後ノ處置大切ナリ．

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