日外会誌. 43(4): 499-514, 1942

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その他

蟲垂炎ノ「アレルギー」成因説ニ關スル一考察
（人蟲垂内ノ抗原性物質ノ檢出）

I．内容要旨
従来蟲垂炎成因論中ノ「アレルギー」説ハ家兎ヲ用ヒテ實驗セラレテ居ルノデアツテ，此ノ説ヲ直チニ人ニ當嵌メ得ルカ否カハ考究セラレテ居ナイ．此ノ爲ニハ人蟲垂内容中ニ抗原性ヲ有スル物質ガ存在スレバ甚ダ好都合デアル．而シテ人蟲垂内容中ニ證明シ得ル抗原トシテハ食物ニ起原ヲ有スルモノガ最モ考へ易イ．此處ニ於テ余ハ人蟲垂内容中ニ豚肉，牛肉及ビ鶏卵白ニ起因スル抗原性ヲ有スル物質ガ存在スルヤ否ヤヲ檢査シタ．即チ豚血淸，牛血淸或ハ鶏卵白ヲ以テ家兎ヲ感作シ，得タル沈降素血淸ヲ海猽ノ腹腔内ニ注射シテ受働性ニ感作シ，手術ニヨリ切除シタル人蟲垂内容物ノ生理的食鹽水溶液ヲ其ノ静脈内ニ注射シ之ニリ過敏症「シヨック」ガ起ルカ否カヲ檢査シタ．若シ人蟲垂内容物中ニ沈降素血淸ニ相應スル抗原ガ存在スルナラバ此ノ場合過敏症「シヨック」ガ起ル譯デアル．
其ノ判定ハ體溢降下ニヨツタ．其ノ際體温ノ最大降下度（Ta）卜，其ノ回復時間（Z）ヲ測定シ，三田敎授ニ倣ツテ過敏症「シヨック」大イサSeヲ次ノ如クニシテ求メタ．
Se=Ta.Z／2
而シテ對照トシテ感作セザル普通ノ海瞑ノ静脈内ニ，切除シタル人蟲垂内容物生理的食鹽水溶液ヲ注射シタ處此ノ場合モ最大攝氏1.5度ノ體温降下ヲ示シ，其ノ回復時間ハ60分間以内デアツタ．
即チ此ノ場合ノSeハ450トナルヲ以テ之ヲ限界トシテ陽性，陰性ノ判定ヲ行ツタ．但壊疽性蟲垂炎ノ高度ナルモノニ於テハ無處置海猽ニ於テモ非常ニ著明ナル體温降下ヲ来スコトガアルノデ之ヲ除外シタ．カクシテ得タ成績ハ總數78例ノ中陽性14例（17.95％），弱陽性6例（7.69%）ニテ他ハ陰性デアル.
尚手術前數日間ニ豚，牛或ハ鵜卵食ヲ確實ニ囁取シナカツタ患者ノ蟲垂ニ於テハ陽性又ハ弱陽性ノ結果ヲ得タルモノハナカツタ．
故ニ此ノ方法ニ依リテ證明ナシ得ル抗原ハ何レモ食物トシテ摂取ナシタルモノニ由来スルコトヲ立證シ得タ．

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