日外会誌. 42(9): 1505-1538, 1941

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その他

神經撮影法ニ依ル局所麻痹法ノ硏究

I．内容要旨
最近ノ造影劑ノ發見發逹ハ， 人體ノ任意ノ部位ヲ「レ」線下ニ可視狀態トセリ.
神經系統ノ撮影法モ同様ニ可能トナリ，余ハ局所麻痺法中，神經内注入傳逹麻痺法，腰椎麻痺法，蔦骨麻痺法等ニ就テ．麻痺液ノ代リニ「トロトラス卜」ヲ用ヒテ神經撮影ヲナシ，神經系統ニ對シ注人セラレタル薬液ノ擴散，吸收，沈著狀態等ヲ「レ」線學的ニ追求觀察シ，以テ局所麻痺法ニ就テ考究セリ． 更ニ併セテ末梢神經系統ノ「レ」線像ニ就テモ述ベタリ.
神經内ニ「トロトラスト」ヲ注入スル時ハ，直チニ神經ノ走行ニ從ヒ求心性ニモ遠心性ニモ擴散シ行キ，擴散大ナルハ全尺骨神經像ヲ示セシモノアリ，或ハ脊髄内ニ迄擴散シタルモノアリ．時間的經過ニ從ヒ，神經鞘ニテハ遠心性ニ，神經内ニテハ求心性ニ流ルゝヲ知ル. 又沈著ハ神經繊維ヨリモ神經鞘ニ於テ著明ナリ．即チ麻痺液モ同様ナル縛歸ヲトリテ作用シ，作用ハ次第ニ消失シ行クモノト思ハル．
腰椎麻痺法ニ準ジ，「トロトラスト」ヲ蜘蛛膜下腔内ニ注入シ， 時間的觀察ヲナスニ， 注入直後ニ於テハ蜘蛛膜下腔最下部ニアルモ，間モナクシテ下腔内ニ於テ脊髄神經特ニ馬尾神經ニ，又ハ蜘蛛膜下腔ヲ出デ各々椎間孔或ハ蔦骨孔ニ向ハントスル脊髄神經ニモ沈著シタル像ヲ鮮明，且ツ微細ナル部迄示スニ至リ，更ニ蜘蛛膜下腔内ニアル種ノ環流アルヲ知ル． 依ッテ腰椎麻痺施行時，麻痺液ハ蜘蛛膜下腔内ニ於ケル脊骸神經，主トシテ馬尾神經ニ，又ハ椎間孔及ビ蔦骨孔ニ向ヒテ各々蜘蛛膜下腔ヨリ出ヅル部ノ脊髄神經ニモ僅ニ作用シテ麻痺ヲ生ズルモノト思ハル.
コレニ反シ，硬膜下腔内ニ「トロトラス卜」ヲ注入シタル時ハ硬膜下腔ノ輪廓及ビ硬膜下腔ヲ出デテ椎間孔又ハ蔦骨孔ニ向ハントスル脊儲神經像ヲ認ムルノミニシテ，硬膜下腔輪廓内ニ脊髄神經像ヲ全ク見ズ．即チ硬膜下腔内ニ麻痺液ヲ注入スルモ麻痺ハ殆ンド生ゼザルモノト思ハル.
硬膜外腔内ニカテラン氏法及ビ余ノ腰椎穿剌硬膜外腔内注入法ニヨリ「トロトラスト」ヲ注入シ觀察スルニ，甚シク上昇シタルハ第一胸椎ノ高サニ及ビタル脊髄硬膜外腔像及ビ椎間孔又ハ蔦骨孔ヲ出デタル脊髄神經像ヲ見硬膜外腔ニ於テハ下部ヨリ上部へ，又ハ硬膜外腔ヨリ脊髄神經鞘ヘノ淋巴流動方向アルヲ知リ薦骨麻痺法ハ硬膜外腔ニ於ケル脊髄神經根及ビ椎間孔又ハ蔦骨孔ヲ出ヅル脊髄神經ニ作用シテ生ズルモノ卜思ハル．ナホ硬肢外腔像ヨリ考按スルニ高拉蔦骨麻痺法ハ左程期待シ得ズ，蔦骨麻痺注ハ脊椎下部領城ニ於ケル麻痺法トシテ利用セラルベキモノト思ハレタリ．

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