日外会誌. 42(4): 625-648, 1941

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その他

輸尿管ノ排尿運動及ビ排尿量ニ對スル實驗的硏究

I．内容要旨
腎臓ハ人體老廢物排泄ノ重要機關ニシテ尿ガ如何ナル伏態ニテ排泄サルゝヤ臨牀上ニ於テモ意味深キ問題ナリ．余ハ余ノ考案セル装置ニ依リ輸尿管收縮運動竝ニ尿量ニ關スル實驗的研究ヲ企テ，正常家兎ニ於テ排尿ニ對スル植物神經毒素竝ビニ利尿劑ノ作用劑ノ作用ニ就テ檢索セリ．
正常家兎ニ於ケル輸尿管收縮運動回數ハ1分間ニ平均4.6囘乃至5.2囘ヲ算シ，又1囘收縮ノ輸尿管内壓上昇ハ0.04乃至0.12竓尿柱ナリ．又輸尿管1囘收縮時間ハ3乃至4秒ヲ要シ，後ニ弛緩期トナリ6乃至7秒ヲ經テ次ノ運動ニ移行ス．
植物神經毒素ハ交感神經及ビ副交感神經ニ作用スベキ2群ニ分チテ實驗ニ供セリ．
「ボスミン」ハ輸尿管ノ内壓下降シ，收縮連動ヲ抑制スルモ，一過性ニシテ後恢復ス．利尿的ニハ影響少シ．
副交感神經末梢刺戟毒ナル「ビロカルピン」ヲ作用セシムルニ， 輸尿管ノ内壓ハ順次ニ多少ノ下降ヲ認ムルモ軈テ注射前ヨリモ緊張シ尿拭モ亦增加ス．副交感神經麻痺毒タル「アトロピン」ノ注射ニ於テハ「ビロカルピン」卜反對ニ輸尿秤ノ内壓ハ急激ニ上昇シ，間モナク下降スルモ後ハ緊張度著明トナリ又利尿モ促進ス.
即チ「アトロピン」卜「ビロカルピン」ハ輸尿管ニ對シテ全ク正反對ニ作用ス．
「ヒスタミン」ハ無尿狀態ヲ呈シ，内壓ニハ關係セズシテ収縮運動ヲ著明ニ增加セシム．
「アセチールヒヨリン」ニ於テハ輸尿管ノ内壓降下最モ著シク，恢復スルコトナケレド蠕動連動ハ最モ活潑ニシテ且增大ス．
「タロールカルシウム」ノ注入ハ内壓ノ下降ヲ認メ運動ハ遅緩トナルモ軈テ恢復シ利尿增進ヲ來タス．
利尿劑トシテハ鹽類利尿劑ノ生理的食鹽水，高張食鹽水，硫酸「ナトリウム」ヲ使用セルニ何レモ濃度大ナル程利尿ハ增進セリ，特ニ硫酸「ナトリウム」20％溶液ニ於テハ收縮カハ滅弱スルヲ見ル．
安息香酸「ナトリウム」珈琲涅ハ注射直後ヨリ急激ニ利尿作用亢進シ，3分後ニハ1分間ニ0.77竓ヲ排尿ス．又收縮頻度ニ於テモ增加ス．「テオチゾール」ハ安那珈卜類型ノ利用作用ヲ有スルモ持續的ナリ．
「ヂウレチン」ニ於テハ一過性ノ輸尿管ノ弛緩ヲ認メ以後緊張ヲ恢復ス．此ノ點他ノ利尿劑ト異ナル．然ル後ニ徐々ニ利尿作用ノ促進ヲ認ム．水銀劑タル「ザリルガン」ハ利尿作用遅退セルモ徐々著明ナル利尿ヲ惹起セリ．
高張葡萄糖液トシテハ25％ト50％ヲ使用セルニ，何レモ直後ヨリ利尿ヲ開始シ，濃度高キ程永續的ニシテ，收縮連動ニ對シテハ影響ナシ．
更ニ臓器製劑ニシテ利尿ニ關與セルト稱セラルゝ「ピツイトリン」竝ニ「チロキシン」ヲ靜脈内ニ注入スルニ 「ビツイトリン」ニ於テハ利尿促進ヲ認ムル輸尿管収縮力ハ全タ減退ス．「チロキシン」ハ著明ナラズ．

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