日外会誌. 40(8): 1585-1607, 1939

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その他

第三篇　病的胃十二指腸（胃癌胃竝ニ十二指腸潰瘍）ニ於ケル胃蠕動運動ノ研究

I．内容要旨
胃癌胃竝ニ十二指腸潰瘍ニ於テハ胃蠕動ニ種々ノ變化ヲ來ス.
幽門狭窄ヲ伴フ胃癌胃浪瘍ニ於テハ異常ニ亢進セル狭窄蠕動ノ外ニ蠕動活動期ト蠕動休止期トニ區別サル活動期ニ於ケル蠕動ハ活潑ニシテ周期稍々速ク（14乃至22秒）波ノ進行極メテ速カナリ．胃壁ニ於ケル癌性竝ニ潰瘍性浸潤部ニ於テハ蠕動ノ減弱或ハ缺損ヲ來スコトハ一般ニ知レタル所ナルモ，余ハ胃潰瘍ノ1例ニ於テ，蠕動休止期ニハ潰瘍部ニ陰影缺損ヲ認メシガ, 一旦蠕動波コノ部ニ來レバ寧ロ異常ニ深キ收縮ノ出現ヲ見タリ．コレ未ダ文獻ニ見ザル所ニシテ將來潰瘍診斷ノ補助トナルモノト信ズ．
十二指腸潰瘍ニ於テハ胃蠕動ノ亢進緊張ノ高昇アリ．蠕動ノ周期ハ略々一定セルモ進行速度大ニシテ持續時間短シ（30乃至41秒）．コノ際幽門ハ擴大開放セルコト多ク潰瘍部下部弛緩ノ現象ニ伴ヒ盛ナル十二指腸ヘノ胃内容排出ヲ見ル.
胃ノ逆蠕動ハ3例ニ於テ之ヲ觀察セリ．卽チ幽門狭窄ヲ伴ヘル胃癌胃潰瘍ノ各1例竝ニ幽門狭窄ヲ伴ハザル十二指腸潰湯ノ1例ナリ．胃ノ逆蠕動ハ甚ダ不規則ナ時間ニ突然幽門近クノ大彎ニ出現シ，胃體ニ至リテ消失スルモノ（典型的逆蠕動）竝ニ幽門竇ニ於テ消失スルモノ（非典型的逆蠕動）アリ．ソノ持續時間ハ極メテ不規則頻度ハ病的胃十二指腸ノ27.3％ニシテ諸家ノ統計ニ比シ甚ダ多シ．コレ觀察装置不充分ナル爲從來見逃サレシモノヲモヨク「レ」線活動寫眞ニテ發見セシ爲ナラム．

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