[書誌情報] [全文PDF] (54198KB) [会員限定・要二段階認証]

日外会誌. 38(9): 1167-1238, 1937


その他

膵液性腹膜炎ノ實驗的研究

名古屋市民病院 外科 醫學士
名古屋醫科大學 齋藤外科學敎室

杉山 淸

I.内容要旨
膵損傷,急性膵臟壊死,急性膵臟炎等ノ疾病時ニ見ラルヽ膵液性腹膜炎ノ死因ハ今日尚不明ニシテ決定シ居ラズ.故ニ余ハ死因ノ何レニアルヤヲ闡明セント企テ純粹ナル膵液ニヨリテ惹起セラルヽ膵液性腹膜炎時ノ死因ニ就テ研究セリ.卽チ余ハ犬ヲ用ヒテ其ノ腹腔内ニ膵液ヲ注入シ,或ハ膵管ノ離斷或ハ膵切創ノ形成等ニヨリテ膵液ヲ腹腔内ニ放流セシメ,又膵液中ニ含有セラルヽ各酵素ノ中何レガ最モ重要ナル役目ヲ演ズルカヲ吟味スルタメ,各酵素ハ之ヲ單獨ニ腹腔内又ハ靜脈内ニ注入實驗シ夫等ノ場合ニ於ケル臨牀症状ノ觀察,血液及血壓ニ及ボス影響殊ニ血淸,尿,胸管淋巴,腹腔内滲出液中ニ於ケル酵素定量,血糖及ビ血淸蛋白ニ就テノ觀察及ビ病理解剖學的檢索ヲ行ヒタリ.其ノ結果ニヨレバ膵液腹胞内注入實驗例ニ於テ最モヨク膵液性腹膜炎臨牀例ノ所見ト相似タルノ結果ヲ来タスモノナルヲ知リタルヲ以テ,之ヲ基準トシテ各酵素ノ注入實驗ヲ行ヒタルニ血液所見,病理解剖學的變化及ビ酵素定量ヨリ見ル時ハ「ヂアスターゼ」注入時最モヨク膵液注入時ノ所見ニ近キヲ認メ,且ツ膵液性腹膜炎臨牀例ニ相似タルノ結果ヲ得タリ.又死亡率等ノ點ヨリ見ルモ三酵素中今日マデ尚ホ輕視セラレタル 「ヂアスターゼ」ハ最モ重要視スベキモノニシテ「トリプシン」及ビ「リパーゼ」ハ共ニ死因ノ一因トハナリ得可キモ,「ヂアスターゼ」ノ夫レニ及バズ.又今日マデ重要視セラレタル 「トリプシン」ハ却ツテ毒性最モ弱シトノ結論ニ逹セリ.


<< 前の論文へ

PDFを閲覧するためには Adobe Reader が必要です。