日外会誌. 37(5): 576-583, 1936

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その他

バセドウ氏病ニ對スル頸部交感神經切除術ニ就テ

I．内容要旨
甲状腺腫・速脈・眼球突出・振顫ヲ主徴候トシ，精神不安・心悸亢進・羸痩ソノ他ノ徴候ヲ示スバセドウ氏病ノ治療ニ關シテハ，病理・發生論ノ區々タル如ク諸種ノ方法アリ．即チ精神療法・食餌療法ヲ始メ，副腎末・臭素劑・沃度劑ノ投興等ニ依ル藥物療法及ビ理學的療法主トシテレ線深逹療法竝ビニ手術療法アリ．然ルニ根本療法トシテ賞用サルヽハ外科的療法ニシテ，甲状腺切除術及ビ交感神經切除術之レナリ．且又本療法ヲ施行スルニ當リ沃度療法ヲ前後處置トシテ併用スルハ甚ダ合理的ナリ．勿論基礎新陳代謝・植物神經機能檢査・血液像ヲ基礎目標トシテ行フハ最モ合埋的ナルモノナリ．余ハバセドウ氏病ニ對シテ甲状腺切除術ヲ施シタル10例及ビ交感神經切除術ヲ行ヒタル5例ニ就キ治療的ノ効果ニ就テ研究シ，且又症候，ソノ他ノ状態ヲ併セテ述べ，本論文ノ主題タルバセドウ氏病ニ對スル交感神經切除術ヲ行ヒタル5例ニ就テ治驗例ヲ詳述シタルモノナリ．即チ最近我敎室ニ於テ入院治療セル18例ニ於ケル統計ニ依レバ
（イ）女ハ男ヨリモ多ク男女ノ比ハ1:1.57
（口）年齢ハ20年臺ニソノ半數ヲ占ム．
（ハ）發病シテヨリ來院迄ハ3ヶ月以内ニ來ル．
（ニ）症候ハ甲状腺腫・速脈・眼球突出・振顫ヲ初メトシ，心悸亢進・發汗・頭痛・精神不安・月經異常・羸痩・目渇多シ．
（ホ）鹽化「アドレナリン」ニ殆ンド反應ス．
（へ）淋巴球增多症ヲ示スモノ多シ．
（卜）基礎新陳代謝ハ殆ンド各例ニ於テ上昇ス．
（チ）甲状腺切除ヲ行ヒタルモノ10例，交感神經切除術ヲ施シタルモノ5例アリ．ソノ中2例ハ甲状腺ヲ切除セルモ諸症候消退セザルモノニ交感神經切除術ヲ行へルニ完全ニ近キ治驗ヲ來セルヲ認メタリ．
（リ）手術ニ先立チテルゴール氏液ヲ投與シタリ．
甲状腺切除術ハ甚ダ効果的ナリト雖モバセドウ氏病中交感神經切除術ノミ行ヒシモノモ相當ノ治癒ヲ營ムヲ認メタリ．勿論神經節ハ上・中・下ノ三節ヲ切除セザレバ再發ヲ來ス憂アリ．

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