日外会誌. 36(4): 1643-1675, 1935
その他
腹膜炎毒素ノ吸收ニ關スル實驗的研究
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岡山醫科大學 石山外科敎室 醫學士（主任 石山敎授） 大杉 眞造 |
余ハ實驗ニヨリ，腹膜炎時，腹腔ヨリノ毒物吸收ハ如何ナル經路ニ於テ行ハルヽモノナリヤヲ證明セントシテ犬ヲ用ヒ次ノ如キ實驗ヲ行ヒタリ．
先ヅ「マウス」ヲ用ヒ，正常犬ノ血淸毒力ヲ定メオキ．
1) 對照トシテ單開腹術ヲ行ヒ，之ガ血淸毒力ニ對スル影響ノ軽徽ナルヲ確メ．
2) 次ニ穿孔性腹膜炎ヲ腸穿孔造設ニヨリ惹起セシメタルニ，此ノ際血淸毒ノ異常ナル高度ノ上昇ヲ認メ，之ニヨリ腹膜炎時，多量ノ毒素ガ腹腔ヨリ吸收サルヽ事ヲ知リタリ．
3) コヽニ於テカ，胸管ヨリノ毒素吸收ヲ知ラント，胸管結紮犬ニ於テ腹膜炎ヲ惹起セシメタルニ血淸ニハ殆ンド全ク毒カノ上昇ヲ見ズ．次ニ豫メ腹膜炎ヲ惹起セシメオキ，24時間後ニ於テ胸管ヲ結紮セルニ，一度上昇ヲ始メタル血淸毒力ハ之ヲ轉機トシテ急遽下降シ行クヲ見タリ．之ニヨリ胸管ヨリ多量ノ毒物吸收ヲ推定セリ．
4) 次ニ淋巴自體ヲ淋巴瘻ニヨリ採取シ，正常時卜腹膜炎時ヲ比較シタルニ，淋巴ノ毒性ハ，一方同時ニ檢セル血淸毒ニハ著明ナル上昇ナキニ關ラズ，遥カニ上昇セルヲ見タリ．
5) カクテ腹膜炎毒ハ淋巴道ヨリ多量ニ吸收セラルヽヲ確認シタレドモ，一面ニハ又血行ニヨリ，門脈ヨリ吸收サルヽ毒物ガ肝臟ニ於テ，解毒作用ヲ受クルタメ，血淸毒ニ影響ナキニハ非ザルヤヲ確メントシテ，時間的ニ肝靜脈門脈血ヲ平時竝ビニ，腹膜炎時ニ比較セルニ兩者ノ間ニハ差違ナク，又股靜脈血ヲモ併セ檢セルニ之モ亦，前ニ者ニ比シ，明ナル差違ハ認メザリキ．
以上5項目ヨリ成ル實驗ニヨリ腹膜炎毒素ハ大部分淋巴道ヨリ吸收サルヽモノナル事ヲ確メ得タリ．
6) 次ニ剔脾竝ビニ大網切除卜血淸毒ノ消長トノ關係ヲ檢セルニ，剔脾犬ニアリテハ，動物ノ抵抗ハ稍々滅弱シ，毒素ノ吸收モ減弱セルヲ見，之ニ反シ大綱切除時ニアリテハ毒素ノ吸收ハ稍々增進セルモノヽ如ク，此ノ際動物ノ抵抗ハ著シク滅弱セルヲ認メタリ．
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