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日外会誌. 36(4): 1609-1616, 1935


その他

急性骨髓炎ノ線診斷法(骨膜下膿瘍撮影法)

名古屋醫科大學 外科學敎室 敎授 醫學博士

齋藤 眞

I.内容要旨
急性骨髓炎ノ急性期ニ於テハ線寫眞ヲ撮影スルモ骨ニ於テ何等ノ變化ヲモ認ムルコトガ出來ナイ.余ハ急性骨髓炎ノ急性期ニ於テ骨膜下膿瘍ノ形成サレタ場合ニ,之レヲ試驗穿刺シタ.穿刺針ハ太キ針ヲ選ビ針ノ斷端面ガ骨面ト平行スル様ニ斜メニ穿刺シ針ガ骨膜下膿瘍腔内ニ逹スルト膿ハ高壓ノ下ニアルカラ自然ト注射筒ノ中ニ噴出シテ來ル.此ノ膿汁ハ血様デアツテ中ニ骨髓ノ破壞ニ依ツテ破壞サレタ脂肪球ヲ含有スルヲ認メル.排膿後ニハ患者ハ局所ニ輕快ノ感ヲ覺ユルノデアル.排膿後骨膜下膿瘍腔内ニ線造影劑「モルヨドール」,「リピオドール」,「ロンプル」,「トロトラスト」等ヲ注入スレバ,是等ノ造影劑ハ骨膜下腔ヲ滿スノデ,線寫眞ヲ撮影スル卜骨膜下膿瘍腔撮影可能デアル.骨膜下膿瘍腔ノ形成ハ骨髓炎ノ廣マレル範圍ト一致シテ居ル爲メニ骨膜下膿瘍腔像ノ廣マリヲ見レバ,直チニ骨髓炎ノ廣マリヲ知ルコトガ出來ル.若シ骨膜下膿瘍ガ骨膜ヲ破ツテ外方ニ出デ筋間膿瘍ヲ形成スレバ同一ナル方法ニ依ツテ形成サレタ筋間膿瘍腔ヲ撮影スルコトガ出來ル.此ノ像ハ骨膜下膿瘍腔像ト異リ周邊ニ筋肉纖維ニ依ツテ溝像ヲ形成スルコトガ特有デアル.
急性骨髓炎ノ時ニ骨膜下膿瘍ヲ試験穿剌シ脂肪滴ヲ含有スル膿ヲ認メルコト及ビ骨膜下膿瘍腔撮影法ヲ施行シ骨膜下膿瘍腔像ヲ認メルコトニ依ツテ急性期ニ於テ早期ニ骨髓炎ヲ臨牀的ニ診斷スルコトが出來ル. 此等ノ方法ハ何等危險ヲ伴ハザル爲メニ急性骨髓炎ノ臨牀的診斷法トナスコトガ出來ル.


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