日外会誌. 26(4): 283-300, 1925
その他
體内ニ於ケル血球分佈ニ關スル硏究
第一 生理的常態ニ於ケル血球分佈狀態
第二 傳染性白血球增減症ノ場合ニ於ケル血球分佈狀態
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臺灣總督府醫學專門學校 敎授兼 日野 一郎 |
體内ヲ循環シ榮養、排泄ノニ大任務ヲ司ル血液中ニ含布セラレ居ル、形態學的要素中ノニ大群屬ナル赤血球竝ニ白血球ハ、體内到ル所、平等ナル分布狀態ヲ呈スルヤ否ヤ、之レ本題研究ノ主要目的ノ一ニ屬ス。
從來、白血球增多症卜ハ、造血臟器ノ機能亢進ノ結果トシテ血液内白血球絶對數ノ增加ヲ意味セリ。之レ Ehrlich 以來、多數ノ血液學者ノ唱道スル所ニシテ、末梢血液像ニヨリ骨髄機能ノ盛衰消長ヲ判斷セントセリ。然ルニ或ル少數ノ一派ハ之卜見解ヲ異ニシ、白血球ガ末梢ニ遊走スレバ末梢血液ニ白血球增多症ヲ呈スルニ反シテ内臟深ク白血球ガ聚集スレバ、末梢ノ白血球減少症ヲ惹起スト主張ス、コレ今日ノ所謂「移動性白血球增多症」ノ鼻租ナレドモ學界ノ注目スル所トナラザリシハ甚ダ遣憾トスル所ナリ。
然ルニ最近 Graeff 及 Ruef ハ造血現象ヲ伴ハズシテ特殊内臟臟器内ニ白血球聚集令スルヲ認メ然モ之ハ生理的ニ存スルモノニシテ時ニ應ジ末梢ニ遊走スルモノト主張シ、從來ノ骨髄性白血球增多症ニ對シ移動性白血球增多症ナル名稱ヲ附セリ。次デ v. Schillug ハ分布性白血球增多症ナル名稱ガ更ニ適當ナルベシト稱セリ、其名稱ノ如何ハ別トシテ、體内各部ニ於テ白血球ノ分布ガ不平等ナル事ハ近來益々其輪廓ヲ明ニセシ所ナリトス。然ルニ一方、赤血球ノ分布狀態ヲ見ルニ従來ノ研究者悉ク、平等分布ヲ主張ス。
余ハ動物實驗ニヨリ白血球ノ體内不平等分布、卽チ移動性白血球增多症ヲ確認シ、更ニソノ原因闡明ヲ企圖シ、從來主張セラレタル綜合原因説ヲ排シテ血液流速ノ變化ガ、ソノ最大原因ナル事ヲ主張セントス。而シテ赤血球ハ體内到ル所平等分布ヲ呈スル事、諸家ノ報告卜異ナル者ナシ。
更ニ又細菌ヲ注入シテ白血球增多症或ハ減少症ノ場合ノ血球分布ヲ見ルニ、概シテ赤白血球トモ全ク平等ノ分布狀態ヲ呈スルヲ確認セリ。竝ニ興味アルハ弱毒力ノ細菌傳染ノ際認ムル所ノ余ノ所謂「潜在性白血球增多症」ノ存スル事ナリトス。
サレバ臨牀上血液檢査ニ當リテ白血球ハ生理的ニ不平等分布ヲ示スモノナルヲ以テ、採血部位ヲ明記スベキ事、竝ニ潜在性白血球增多症ノ存スルガ故ニ單ニ血球數ノ計算ノミヲ以テ滿足セズ、各種白血球百分率ヲモ併セ觀察スルニアラズンバ、完全ナル血液檢査法ニアラザル事等ヲ注意セリ。
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