日外会誌. 23(4): 315-332, 1922
その他
膿(Eiter)ニ關スル硏究
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慶應義塾大學 醫學部外科學敎室 醫學士（主任、茂木敎授） 柳 壯一 |
著者ハ先ヅ從來膿ニ關シテノ研究殊ニ其ノ形態學的研究ノ乏シキ事ヲ知リテコレガ檢索ヲ企圖シ、スベテ人體ヨリ得タル膿ニ就テ種々ナル研究ヲ行ヒタリ。（一）、先ヅ物理學的性質トシテ其色、臭、粘稠度及ビ比重ヲ見テ其ノ所見ヲ擧ゲ、（二）、次ニ其「プロテオリーゼ」ノ速度等ニヨリテ起炎菌ニヨル膿ノ差異如何ヲ檢シテ、連鎖狀球菌ニヨルモノ最モ速ク、葡萄狀球菌ニヨルモノ之ニ次ギ、結核性膿ニヨルモノ最モ遅クシテ前者ノ數分ノ一ニ過ギザルヲ見タリ。（三）、次ニ膿球成分細胞ニ就テ觀察シ、其ノ細胞種類ヲ列擧シ且ツ其ノ各自ニ就テノ詳細ナル所見ヲ記シテ膿球成分細胞ハ必ズシモ總テ血液中ヨリ遊走シタリシモノニ非ズシテ組織細胞モ時トシテ其ノ一部ヲナシ得ル事ヲ立證シ、ナホ特殊ナル血液細胞等ハ特殊ナル化膿菌ニヨル場合ニ比較的多ク出現スル事實アルヲ知レリ。（四）、次ニカヽル膿球中ニハ血液細胞ノ未熟型決シテ出現セザル事先進ノ言ト一致スルヲ説キ、其ノ實證卜シテ自ラ經驗シタル白血病患者化膿一例ノ膿所見ヲ擧ゲタリ。(五)、次ニ著者ハ膿球成分細胞ノ種類及ビ比率ガ其ノ起炎細菌ニヨリテ左右セラルヽ事ナキヤ否ヤヲ檢シテ其間ニアル關係ノ存スルヲ知リ、特殊ナル化膿菌ニヨル膿中ニハ通常ノ化膿ニヨルモノニ比シテ複雑ナル關係アルヲ見テ其ノ實例ヲ擧ゲ、（六）、カヽル關係ハ又身體一般症狀ニヨリテ影響ヲ受クル事ナキヤヲ檢シテ發熱、膿分泌ノ多寡、年齢及ビ炎症部位等ハコノ影響ナキモ、一般症狀重篤險惡ナル時ハ可ナリ著シキ差異ヲ示スヲ見テ、ナホ深ク研究スル事ニヨリテ其ノ豫後ヲトシ得ベキカヲ思ヒ、（七）、カクシテ最後ニ膿球成分ニ對シテノ時間的影響如何ヲ檢索シテ、閉塞セラレタル膿瘍ニアリテハ其ノ起炎ヨリノ時間ガ膿球ニ及ボス影響比較的尠キモ、一日開放セラルヽヤ其ノ成分細胞ハ時ノ經過卜共ニ其ノ種類及ビ比率ニ著シキ差異ヲ示シテ或ルモノハ增加シ、アルモノハ滅少シ又アル細胞ハ當初存在セザリシモノモ時卜共ニ出現スル等興味アル所見ヲ示ス事ヲ知リテコレヲ表ニヨリテ解説シ、最後ニ膿球卜雖モコレヲ仔細ニ觀察スル時ハ種々ナル條件ニヨリテ多種多樣ナル所見ヲ示シ、極メテ複雑セルガ如キモ其間自ラ一定ノ規準アルヲ知リ得タリト結ベリ。
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