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日外会誌. 125(6): 534-538, 2024


会員のための企画

異種移植の臨床応用を目指すための日本における課題

鹿児島大学 先端科学研究推進センター生命科学動物実験ユニット大動物研究推進部門

佐原 寿史

内容要旨
臓器移植は末期臓器不全に対する根治的治療として世界的に定着しているが,ドナー不足は国際的にも深刻な問題である.ブタをドナーとする異種移植はドナー不足の究極の解決策となりうるが,ブタ・霊長類間の免疫,凝固,炎症反応の制御が大きな課題となる.しかし,遺伝子改変技術の進歩に伴い,複数の異種抗原を除去し,ヒトの補体,凝固,炎症抑制タンパクを発現する遺伝子改変ブタが作出され,また免疫抑制療法が改良された結果,2022年1月に米国で10種類の遺伝子改変ブタ心臓が心臓病患者に移植されて以降,異種移植が臓器不足解消の現実的な選択肢となる可能性が強く認識される報告が次々と出されている.このような背景のもと,異種移植の臨床試験に備えた指針作りが日本でも本格化している.遺伝子改変ブタの生産・管理体制や病原体検査法の標準化,遺伝子改変ブタを用いる際の品質・安全性を明確にすること,非ヒト霊長類を用いた移植実験を通じて高水準の異種移植実施体制を構築することによって,臨床応用への道筋を明確にすることが重要である.

キーワード
異種移植, 遺伝子改変ブタ, 指定病原体フリー, 前臨床移植実験, レギュラトリーサイエンス

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